黄犬契約は憲法・労働組合法違反!自分の身は自分で守ろう

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採用面接で「労働組合に入らないって約束してくれたら、採用するよ」って言われたの。私、どうしたらいいかな?

それは黄犬契約(おうけんけいやく・こうけんけいやく)って言って、憲法で禁止されてる行為なんだ。だから従う必要はないよ。

でも、断ったら採用してくれないかもしれないし。働きたい会社だから、絶対に採用されたいの。

そうだよね。じゃあ黄犬契約について詳しく解説していくから、正しい対応方法についても学んでいこう!

「黄犬契約」という言葉をご存知の方は、それほど多くはないのではないでしょうか。

ただ実は、労働の現場で頻繁に横行している、企業の不法行為。労働者も知っておきたい労働問題の一つです。

自分自身が「黄犬契約」に直面したとき、どう対応すればいいのか。その概要とともに紹介していきましょう!

目次

黄犬契約とは?

そもそも「黄犬契約」とは、労働組合に加入しないことや、労働組合からの脱退、さらに積極的な組合活動をしないことを条件とした労働契約のこと。

たとえば「労働組合に加入しないなら採用する」と提示したり、「労働組合からの離脱」を条件に昇進を打診したりといったことが当てはまります。

ここで簡単に、この “奇抜” な名前が名付けられた由来とともに、その歴史について触れておきましょう。

その由来をさかのぼれば、1920年代、アメリカの大恐慌時代にたどりつきます。

この当時、多くの経営者が労働運動の弾圧を目的に、労働者に対して労働組合への加入や脱退を雇用条件としていました。

こうした条件を呑む労働者は「黄色い犬(yellow dog=卑怯な裏切り者)」と呼ばれており、その名残から日本においても「黄犬契約」と呼ばれるようになったのです。

そして現在、日本ではこうした「黄犬契約」は労働組合法7条によって、不当労働行為として禁じられています。

黄犬契約は憲法違反!?

それではなぜ、「黄犬契約」は禁止行為とされているのでしょう。

それは端的にいって、憲法28条によって保障された、労働者の権利を侵害する行為となるためです。

具体的にどういった点について、「黄犬契約」は憲法違反となるのでしょうか。

よりわかりやすく理解を深めるために、まず「労働組合」とはなにかから押さえていきたいと思います。

「労働組合」が憲法で保障される権利とは?

そもそも労働組合とは、賃金や賞与、労働時間をはじめとした労働条件の改善を目的とした労働者を主体とした団体です。

ここでは以下3つの権利が、憲法28条によって保障されています。

①団結権

雇用主と労働者が対等な立場で話し合うために、労働組合をつくる権利。同時に自由に組合へ加入できる権利も認めています。

②団体交渉権

労働組合が雇用主と団体交渉する権利。正当な理由を示さず、拒否することは認められていません。

③団体行動権

労働条件改善などの要求実現のため、労働組合が団体で行動する権利。ストライキなどがこれに当たります。

なぜ上記のように、労働組合は憲法によってその活動が保障されているのでしょうか。

それは労働者に比べ、圧倒的に雇用主である会社の立場が強いという実情があるためです。

そもそも労働力を提供する労働者と、それに対する賃金を支払う雇用主は対等な関係で労働契約を遂行することが理想だといえます。

ただ現実を見ると、不当な賃金や労働環境を提示されたとしても、労働者は受け入れざるを得ない状況があるといえるでしょう。

たとえば過剰な長時間労働に苦しめられ、改善の交渉を申し出たとしても、すべての雇用主が簡単に応じてくれるでしょうか。

交渉のテーブルにすらついてくれなかったり、逆に報復として一層の不当な環境を強いたりするといったことは容易に想像できます。

労働組合は、こうした弱い立場にある労働者が団結し、集団で活動・交渉することで力を持ち、会社と対等な立場で話し合うことを可能としているのです。

そしてこういった重要な役割を持つ労働組合の存在が侵害されたり、そこでの活動によって従業員が不利益をこうむらないために、憲法によっても存在や活動が保障されています。

黄犬契約は従業員と雇用主の対等な関係を侵害するもの

上記からもわかるように、「黄犬契約」は、直接的にこの “団結権” を侵害しています。

つまり、労働者の当然の権利として保障されている “労働組合に加入する権利”を侵害しているのです。

そのため法的にも「黄犬契約」は “不当労働行為” として禁止されており、違反した会社は罰則などに処されることとなります。

また「黄犬契約」と同様に、憲法で保障された労働組合の活動を守るため、 “不当労働行為” としては以下のような内容が禁止されています。

組合員であることを理由とする解雇その他の不利益取扱い

以下のような理由で、労働者を解雇したり、その他の不利益な取扱いをすること。

  • 労働組合の組合員であること
  • 労働組合に加入しようとしたこと
  • 労働組合を結成しようとしたこと
  • 労働組合の正当な行為をしたこと

正当な理由のない団体交渉の拒否

正当な理由なく、労働者の代表者との団体交渉を拒むこと

労働組合の運営などへの支配介入

労働者による労働組合の結成、運営を支配し、介入すること

労働組合への経理上の援助

労働組合の運営において、経費の支払いや経理上の援助を与えること

労働委員会への申立てなどを理由とする不利益な取扱い

労働委員会への不当労働行為の申立てなどを理由に、労働者を解雇するなど不利益な取扱いをすること

このように労働組合を制限する行為は、法律によって細かく禁止されています。

従業員と雇用主である会社が対等な関係で話し合える労働組合は、より良い社会をつくる上でも必要不可欠な機能であると認められているともいえるでしょう。

会社が黄犬契約を採用する意図

「黄犬契約」は “不当労働行為” として禁止されているにも関わらず、なぜこうした行為を行う会社があるのでしょうか。

それは残念ながら、従業員による労働組合の活動を快く思っていない会社、経営者がいるといった事実があるためです。

労働組合は会社から提示された賃金や労働条件に対し、対等な立場として改善を目指す組織となります。

そのため労働組合が力を持つことで、自分たちの意見が通りづらくなったり、変更せざるを得ない状況に置かれたりということを、わずらわしく思う経営者がいることは容易に想像できるでしょう。

またとくに「黄犬契約」は、 “これから社員になろうとする” 人に提示されることが多い傾向にあります。

「労働組合に加入しないと契約してくれるなら採用する」と採用の場で話すといったケースが、その一例です。

採用希望者は、採用の可否を会社に決められるという状況から、とくに会社より弱い立場にあるといえます。

さらに新卒での採用希望者は、労働組合の活動に疎いのが一般的です。「黄犬契約」の問題への理解がなく、会社の言いなりになる可能性も高いといえるでしょう。

「黄犬契約」は表沙汰になれば、もちろん問題となり、会社にとっても利益になりません。ただ第三者のいない密室で行われることで把握しづらく、水面下で横行する原因となっています。

「黄犬契約」は知らないうちに労働組合の結束力や士気を低下させ、弱体化する恐ろしい不当労働行為です。

会社から受ける不当な取扱いから自分自身の身を守るために、労働組合が健全に機能することはとても重要なことだといえます。

そのためにも労働者は、その活動を守り、適切に対応することが大切だといえるでしょう。

労働問題はどこに相談したら良い?

それでは、「黄犬契約」を会社から提示された場合、労働者はどのように対応するべきなのでしょうか。

端的にお伝えすると、提示されたその条件に従う必要はありません。

そもそも「黄犬契約」は、それ自体が違法だからです。

そのため、その場は言われたように約束を交わし、その後、労働組合に加入したり、活動を続けても問題はありません。

それによって会社が “約束に違反した” として、解雇や不当な労働環境を強いることは公序良俗違反であり、通りません。

またこうした会社の現状を労働組合に共有すれば、状況を改善するための適切な対応も期待できます!

このように労働者の知識のなさや弱い立場につけ込み、不当な要求がなされることは労働現場ではよくあることです。

もしそういった場面に直面した場合、自社の労働組合や外部の労働組合である「ユニオン」に相談することは一つの解決手段となります。

一人では解決できないことでも、団結して対応することで解決に導くための心強い味方となってくれるはずです!

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この記事を書いた人

日々、数十人の女性からのLINE相談などを受けながら活動中。セクハラに対する労働紛争にて、300万円の解決金決着などの実績も多数あります。
セクハラ問題でのお悩みや不安に、少しでもお力添え出来ればと日々奮闘しております!

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