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看護師でも未払い残業代は取り返せる!
看護師の方で病院から「うちは残業代が払えない」や「残業代はそもそも基本給に含まれて支払っている」などと言われたことがある方も多いかもしれません。
看護師の仕事は、緊急対応が必要なこともあり、 残業になりやすいのが特徴です。
これまで一度も残業代を受け取ったことがない方もいるでしょう。
しかし看護師にも、もちろん残業代は発生しますし、後から請求することも可能です。
本記事では、看護師の未払い残業代について、未払いになりやすいパターンや残業代のルール、請求方法などを解説します。過去の判例も紹介しますので、参考にしてみてください。
多くの看護師さんが残業代が出ないことに不満を持っている
看護師さんの多くは残業代について何らかの不満を持っていることが多いです。
業務の都合上、残業代への考え方が他の職種とは特殊になりやすい傾向にあります。
また役職が上がるほどに、所定時間外にやるべき業務も増加していくでしょう。
2019年の日本看護師協会による残業時間の調査では次のような結果となっています。
件数 | 割合 | |
---|---|---|
0 時間 | 184 | 5.4% |
0時間超~1時間未満 | 405 | 12.0% |
1~4時間未満 | 985 |
29.1%
|
4~7時間未満 | 711 | 21.0% |
7~10時間未満 | 461 | 13.6% |
10~15時間未満 | 380 | 11.2% |
15~20時間未満 | 93 | 2.7% |
20時間以上 | 31 | 0.9% |
無回答・不明 | 135 | 4.0% |
2019年7月における1人あたりの月平均超過勤務時間は「1~4時間未満」が 29.1%と最も多く、次いで「4~7 時間未満」が 21.0%、「7~10 時間未満」が 13.6%でした。
なお「20 時間以上」と答えた方は全体の0.9%となっています。
しかし看護師は、そもそも残業代はつかないと捉えている方がいるのも事実です。
実際に病院からは残業代が出ておらず、同僚や先輩職員も請求していなければ、そう考えてもおかしくありません。
ただし看護師も、残業代を請求できます。
残業代は賃金の一種であり、請求権は労働基準法に定められた労働者の権利です。
ではなぜ、看護師の残業代は未払いになりやすいのでしょうか。
それにはいくつかの残業パターンが関係しているようです。
代表的な残業パターンを3つ紹介します。
看護師が未払いになりやすい残業パターン
看護師たちが働く医療現場では、未払いの残業代が発生しやすいのでしょうか。
その大きな理由には次のようなことが考えられます。
- 看護師が常に人員不足
- 患者の看護自体が激務
- 事務処理などが多い
ただしこれらは看護師に残業代を支払われなくてよい理由にはなりません。
看護師などへの残業代未払いが起きやすい代表的な残業パターンを3つ紹介します。
病院内での自主的な研修
病院内で行う自主的な研修などに対して、残業代がつかないケースがあります。
特に大きな病院では技術や品質の向上を目的に、院内で研修を実施することが多いでしょう。
たとえ自主参加となっていたとしても、業務を行う上で必要とする研修であれば受けざるを得ません。
休日出勤や残業時間で研修を実施する病院もあります。
この研修については「自主参加」を理由に残業代がつかない病院も多く、未払いになりやすいパターンの1つといえるでしょう。
始業前に行う作業
看護師が安定した医療サービスを提供するためには、患者さんの情報収集がとても重要な役割を果たします。
そのためにも就業開始後に申し開きなどを行い、情報共有がなされるため、勤務時間よりも早く出勤しなければ間に合いません。
早めに出勤して事前準備を行う時間に対しては、早出手当がつかない場合も多いようです。
いくら準備とはいえ、業務の進行上で必要であれば労働時間として認められる可能性が高いでしょう。
特に新人の看護師は心情的には「残業よりもに申請しづらい」と感じることが多いようです。
看護師も当てはまる!残業に関するルール
看護師だけでなく、企業で働く全てに人に適用されるのが「労働基準法」です。
残業代の未払いや不当な金額の支給などは法律違反にあたります。ここでは改めて残業代のルールについて整理しましょう。
残業代として認められる時間
残業代は「法定労働時間を超えて働いた時間」に対して支払われる賃金を指します。
法定労働時間とは具体的に「1日8時間」もしくは「週40時間」の2パターンです。
いずれかのパターンを超えて働いた部分が「残業」として扱われます。
残業部分は看護師も他の職種同様に、残業代が支払われる必要があるのです。
もし1日8時間、週40時間を超えて仕事をしながらも、残業代が支払われていない場合は例外なく請求できます。
労働時間として扱える時間
残業時間のルールは分かりました。
ただし勤務時間や労働時間のルールについても正しく理解しておく必要があります。
労働時間とは労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間を指します。
一方、勤務時間は企業の始業時刻から終業時刻までの時間のことです。
これらは企業の就業規則として定められているでしょう。
たとえば勤務時間が8:00〜17:00の場合、休憩時間の1時間を差し引くと労働時間は7時間となります。
つまり使用者にあたる職場の上司などから、仕事の依頼や指示を受けている時間はすべて労働時間なのです。
また職場の上司などからの仕事の依頼や指示がない場合も次のような場合は労働時間として認められます。
- あきらかに就業時間内には終了できない量の仕事が残っている
- 事前に指示された時間内ではそもそも完了できない
- 急患や就業時間外の患者への緊急対応
緊急性の高い内容であれば、タイムカードに記録がなかったとしても、労働時間として扱われる可能性が高いです。
看護師も当てはまる残業代が支払われる条件は次のとおりになります。
- 1日8時間もしくは週40時間を超えた働いた時間
- 使用者の指揮命令下に置かれている中で働いた時間
いずれの条件も満たす場合は、看護師でも労働時間としてカウントされ、残業代が必ず発生することを認識しておきましょう。
もらえるはずだった残業代の計算方法
続いて、本来もらえるはずだった残業代の計算方法についてです。
紹介するポイントごとに確認しましょう。
まずは過去の給料明細を確認
もらえるはずだった残業代の計算には過去の給料明細が必要です。
改めて見直すことで「勤務時間を超えて働いているはずの月に残業代が支払われていない」「本来の支払われるはずの残業代よりも少ない」といったことに気づくかもしれません。
残業代だけでなく、休日労働手当や夜勤手当なども支払われているか確認しましょう。
未払い残業代を計算するための公式
未払いの残業代を算出するには、次の計算式に当てはめてみてください。
残業代=1時間当たりの賃金×残業時間×割増率(1.25%)
1時間あたりの賃金は、月給÷月あたりの所定労働時間で割り出せます。
例えば月給が32万円、月あたりの所定労働時間が160時間の場合、1時間あたりの賃金単価は2,000円です。
そして、残業時間が40時間だったとすると看護師の以下のように計算します。
2,000円×40時間×1.25=100,000円
もしこの公式で算出した金額よりも支払われている金額が少なければ、未払いの残業代が発生している可能性があります。
夜勤などの時間外かつ深夜労働の割増率は1.5%です。
看護師の場合は夜勤が多く、1.5倍の割増しが適用されていないケースも多いです。
ただし賃金単価の計算は、単に基本給のみからは算出できません。
法律上で除外賃金とされる手当を除いて算出する必要があるのです。
正確な未払金額を知りたい方は、社労士や弁護士などのプロに相談することをおすすめします。
また2021年までの未払い残業代の請求期限は最大で3年分です。
もし気になる残業代がある場合は早めに確認するようにしましょう。
未払い残業代を請求するには?
未払い残業代を請求するにはそれなりの準備が必要となります。
特に高額な未払いが見つかった場合は正しい流れや方法で請求するほうが無難です。
そこで、未払い残業代を請求する際の主な流れや必要となる証拠、請求方法などを解説します。
未払い残業代を請求する際の主な流れ
病院側に未払いの残業代を請求す際は次の流れに沿って進めましょう
- 勤務する病院に内容証明郵便を送付
- 病院との話し合いを実施
- 勤務する病院に内容証明郵便を送付
- 証拠を集めた上で労働基準監督署に相談
- 話し合いでは解決しない場合は労働審判制度を利用
- 最終的には訴訟を検討
大きく分けて5つのステップで進みます。
いずれも自分1人で行うのは難しいため、社労士や弁護士などのプロへの相談が必須となるでしょう。
未払い残業代を請求する際の証拠
未払い残業代を請求する際にはそれを証明するための証拠が必要です。
使用者としては、正当な残業代を支払っていると主張する場合が多いでしょう。
実際に残業代の未払いがあった証拠がなければ、裁判所などは事実を確認できません。
そうなれば、こちらの主張を通すのが難しくなります。
準備するべき証拠は大きく分けて2種類あります。
「雇用の事実や労働条件を証明できるもの」と「労働時間やその内容を証明できるもの」です。
雇用の事実や労働条件を証明できるものには次のようなものがあります。
- 労働契約書
- 雇用契約書
- 雇用通知書
- 就業規則の写し
また労働時間やその内容を証明できるものは次の通りです。
- シフト表
- タイムカード
- 勤怠システムの記録
- 業務日報
- 就業時間を記したメモ
- 電子カルテの記録
- 上司などからの残業を指示するメール
- メールの履歴
- 自身のスマホに残る帰宅を示すデータ
これらの資料やデータを準備することで、残業の事実を証明できます。
また「使用者の指示なく残業していた」といった主張に対しても対抗できるでしょう。
もし自ら証拠を集めることが難しい場合は、弁護士などに相談してみてください。
就業規則や勤怠データなどは弁護士を通じて開示要求できます。
退職後でも残業代請求は可能
もし退職後に未払い残業代があることに気づいた場合も請求は可能です。
ただし、退職後は在職に比べて証拠集めが難しい場合もあります。
「勤怠データの取得」「タイムカードの写し」「就業規則の写し」などはできる限り在職中の内に収集しておくことをおすすめします。
また前述のとおり、未払い残業代の請求期限は3年以内です。それ以降は時効となり、権利が消滅します。
看護師の請求判例
これまでも医療従事者の未払い残業代に関する問題は何度も取り上げられました。
そこで実際に看護師が未払い残業代請求を行った判例をいくつか紹介します。
【判例1】5億6千万円にのぼる未払い残業代を支給
2017年12月、佐賀県のある医療センターにおいて看護師や技師ら880人に未払い残業代があることが判明しました。
その合計額はなんと約計5億6千万円にのぼったのです。
労働基準監督署からの是正勧告を受け、計1,540人分の過去2年間の未払い残業代を調査し、判明しました。
【判例2】約2億円の残業代が不払い
兵庫県のある病院では、医師や看護師に対して残業代を支給しておらず、労働基準監督署から未払い残業代の支払い勧告を受けました。
2017年12月からの約2年間に勤務していた約100名の未払い残業代が見直され、約2億円を支払ったのです。
【判例3】150名分、1,500万円の残業代が不払い
富山県のある病院では、2017年9月からの約1年間、看護師や技師、薬剤師など合計150名に対して残業代を支払っていませんでした。
その額は約1,500万円です。
労働基準監督署からの是正勧告を受けて、2018年8月までに不払い分の全額を支給しました。
まとめ
ここまで看護師の未払い残業代について、未払いになりやすいパターンや残業代のルール、請求方法などを解説しました。
昨今、医療現場においても労働環境の改善を進める動きがあり、少しずつ改善へと向かっている状況といえるでしょう。
ただし、すべての病院で改善に向かっているわけではありません。
もし今回ご紹介した内容を参考に、自身の未払い残業代が判明した場合は正しい方法で請求するようにしてください。
看護師も他の業種と同様に労働時間を超えて働いた場合は、その時間分の残業代が受け取る権利があります。
未払い残業代を請求には、まずそれを証明する証拠集めが重要であるとお伝えしました。
もし未払い残業代の請求によって、労働審判や裁判になっても、確実な証拠があれば自身の主張を通すことは可能です。
「交渉が苦手な方」や「手続きや準備に不安を感じる方」はねこの手ユニオンまでご相談ください!
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