年俸制でも残業代って請求できるの?

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プロのアスリートの給与形態のほとんどが「年俸制」なのは有名ですよね。

そして、現在ではサラリーマンでも年俸制で契約をされる人が着々と増えてきています。

なぜ、この年俸制という給与形態での契約が増加現象にあるのでしょうか?

  • 年功序列や勤務時間の長さによる評価からの脱却
  • 成果報酬による報酬なので、密度の高い業務遂行が期待される
  • 社員のモチベーションの向上と組織の活性化が生まれる
  • 優秀な人材が採用されやすく、人材が退職しにくい環境に変化する

「私は年俸制だから残業代は出ない」「残業代は元々込みの契約だし・・・」

と思っている方、多くいらっしゃるのではないでしょうか。

結論、年俸制でも残業代は発生します

なぜ「残業代は出ない」というイメージが出来上がったのか、年俸制の契約の際に確認すべき部分、残業代が請求できる条件などをこちらで紹介させて頂きます。

目次

年俸制でも時間外労働は出る!労働時間の定義

そもそも年俸制の定義とは何なのでしょうか?
年俸制と月給制の制度としての大きな違いは、給与額の決定期間が年単位か、月単位かという点だけなのです。

年俸制というのは会社が個人と雇用契約を結び、給与の決定が年単位で決定されているという認識で問題ありません。

年俸制であっても個人は「雇用されている状態」です。会社と個人は労働基準法を遵守するのがルールです。労働基準法の第37条にもしっかりと

時間外労働及び休日出勤をした労働者には政令で定める率以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない

労働基準法第37条

と書かれています。

年俸制だと残業代が発生しない・貰えないという認識を持っている人が多くいます。

プロスポーツ選手や世界で活躍するようなアスリートのほとんどが一般的に個人事業主であり毎年、オフシーズンに企業や所属チームとの契約更新・交渉をするというのが当然です。

このようなイメージが私たちも刷り込まれており、会社と個人の雇用契約が月給制と年俸制では全く違うものと認識してしまう大きな理由の1つとなっています。

また年俸制は賞与(ボーナス)も月給制と違い、年俸の賃金に含まれるため残業代も年俸の中に入っていると勘違いしやすい部分なのでしょう。

あやふやにされてしまいやすい年俸制での労働時間の定義とは

年俸制というと業績の成果を出す事で給与が増減する事がほとんどで、労働時間とは関係が無いと思ってしまいがちです。

ですが、前述した通り雇用契約を交わしている状態ですので必ず労働基準法が適用されます。

もちろん労働時間は遵守しなくてはいけません。
会社は労働者が労働時間外の勤務をした場合には割増賃金を支払う義務があるのです。

年俸制も月給制も法定労働時間は同じです。

もし年俸制で雇用契約を結んでいない場合(個人事業主)は例外ですが本来、会社に勤務しているサラリーマンであれば1日8時間・週に40時間以内という風に労働基準法で定められています。

年俸制だからという理由で法定労働時間を把握しなくていい・守らなくていいという事はありません。

もし出勤時間と退勤時間を記録するものが無い場合であったとしても自分自身で記録をとっておく事をおすすめします。

未払い残業代を請求できるケース

年俸制の場合

  • 管理職に就いている
  • 外資系企業で働いている
  • ベンチャー企業で働いている

という理由で「残業代は発生しません!」というのは何の言い訳にもなりません。

ここでは未払い残業代が請求できるケースを紹介いたします。

管理職に就いている場合

労働基準法において定められている「管理監督者」の場合は残業代を会社が支払う義務はありません。

ですが、ほとんどの管理職の社員は労働基準法における「管理監督者」の要件を満たしていません

管理監督者とは

  • 出勤退勤の日程と時間を自ら自由に決められる
  • 自分の店舗、営業所以外にも人事権がある
  • 一般社員とは異なる待遇を受けている

という要件を満たしている必要があります。

管理職に就いているから残業代が出ない。
ではなく、残業代は発生します。未払い残業代も請求可能です。

外資系企業で働いている場合

外資系企業はそもそも、年俸制を採用している会社が多いです。そのせいか、外資系企業は日本の企業とルールが違う・ルールが異なるから残業代は発生しないと判断しているケースがあるようです。
ですが、年俸制を採用している外資系企業であっても残業代を支払わなければ労働基準法違反です。
国内にある会社であれば労働基準法を遵守する義務があります。

ベンチャー企業で働いている場合

ベンチャー企業も年俸制を採用している会社が非常に多くあります。年俸制での雇用契約が当たり前のように思ってしまい、残業代が発生しない事も当たり前と思ってしまうケースが多くあります。
これも間違いです。
外資系企業と同様ですが、残業代が発生しない場合は労働基準法違反となり罰せられる対象です。
年俸制だから、という理由で残業代を出せない場合は違法となります。

正しい時間外労働の計算方法

年俸制における正しい残業代の計算方法ですが以下のようになります。

残業代=基礎時給×割増率×残業時間

詳しくみていきましょう!

基礎時給を計算する

年俸制の場合、基礎時給の計算が月給制と比べて特殊となります。基礎時給とは、残業1時間における賃金の事です。

年俸制の場合、このような計算式となります。

基礎時給=年俸金額÷12ヶ月÷一月平均の所定労働時間(平均170時間前後)

具体例として、以下のようになります。

(例)年400俸万円の場合

400万円÷12÷170時間=1961円(基礎時給)

割増率をかける

割増率とは、基礎時給にかけるもので労働基準法の第36条(36協定)において定められている比率になります。

労働条件 基礎時給比
1 時間外労働 1.25倍
2 法定休日労働 1.35倍
3 深夜労働 1.25倍
4 時間外労働+深夜労働 1.5倍
5 休日労働+深夜労働 1.6倍

上記の割増率を基礎時給にかける事で、残業1時間あたりの賃金が正しく計算されます。

(例)基礎時給、1961円の場合

1961円×1.25=2451円

残業時間をかける

最後に今までの計算で出した残業1時間あたりの賃金に、あなたが実際に残業をした時間をかける事で本来の残業代を出す事ができます。
ただし、みなし時間制で決められている時間内の分は含めないよう計算してください。

(例)残業時間が40時間あったと仮定

2451円×40時間=12万2550円

実際に計算してみると残業代も高額となる事がほとんどです。

今まで残業代を貰っていない方は証拠を揃えつつ、計算してみると良いでしょう。

未払い残業代は3年分まで遡って請求できるので、最大3年分で常に同等の残業時間だったと仮定して計算してみます。

12万2550円×36ヶ月=441万1800円

未払いの残業代を計算してみていかがだったでしょうか?

未払いの残業代が高額だった事で

高揚感を感じた人気付かなかったら会社は何も言ってこなかったのか…と落胆した人請求出来るとはいえ、複雑な想いなのではないでしょうか。

ですが大丈夫です。

未払いの給与は、請求できます。
しかし年俸制での雇用契約の場合は、成果を出す事で会社側が対価としてそれなりの給与を用意してくれる事も大いに期待できる部分です。

特別賞与で大幅な賃金を得られる可能性も十分にあります。

あなたが大きな結果を出す事で未払いの残業代を一気に取り返せる位になる可能性もあります。

今、働いている会社に将来性がありその点において期待が出来るのであれば注力するのは成果を出す事です。

しかし、同僚や上司、その他の社員を見た時に将来性を感じないのであれば会社から身を引く事を念頭に置き、未払い残業代の請求のために証拠集めを始める事をおすすめします。

未払い残業代が出ないケースも

雇用契約の内容によっては残業代が発生しない場合もあります。これは年俸制だから残業代が発生しない・未払い残業代が出ないという事ではありません。

では、未払い残業代が出ないケースをご紹介いたします。

みなし時間制(裁量労働制)によるもの

みなし時間制というのは雇用契約の時点で、事前にある程度の時間外労働が発生する事を見込んで、あらかじめ年俸の中に残業代を含んでおく制度の事です。

例として「年俸には1ヵ月〇時間、△円分の残業代を含む」のような記述がされている事が多くあります。

実際に契約をする際に内容は覚えておられるでしょうか?
実際に雇用契約をする時にしっかり熟読して契約を交わす人はあまりいないのではないでしょうか。

みなし時間制を含んだ契約を交わしている場合、所定時間以内の残業代は年俸に含まれているため、未払い残業代ではなく決定されている年俸内の年俸となります。
この点は混同しないように気を付けましょう。

管理責任者の場合

管理監督者とは、経営者と同等の立場にいて出退勤時間の決まりがなく、一般社員との給与に差があるといった役職・立場の事です。
労働基準法では「管理監督者には割増賃金の支払い義務はない」と記載されています。

年俸制で出勤時間や退勤時間も決まっておらず、年俸が数千万円で働くような人にとっては、この管理監督者という立場の条件に当てはまる人はいます。
ですが、年俸額が数百万円で労働時間も労働基準法で定められている人には、管理監督者は当てはまりません

個人事業主の場合

少ないケースですが、会社と個人が業務提携を結んだ場合、個人側が「個人事業主」という状態になっている場合があります。

最近では個人事業主として働く事を推奨する企業もたくさん出てきているので、このケースは今後増えてくる所でしょう。

個人事業主とは、俗にいう「自営業者」の事で、雇用契約ではなく業務委託契約によって時間の制約に縛られることなく委託内容や成果によって報酬が支払われる契約で働いている人の事をいいます。

事前に個人側が個人事業主の状態で業務委託契約を交わすのであれば自己責任等も把握した上での契約となります。

ですが、悪質な会社だった場合年俸制という他の社員と少し違う契約内容という事に紛れさせ、年俸制の社員を個人事業主に一方的にしてしまう事があるようです。

もしそうなってしまうと、税金・給与(残業、賞与など含む)・社会保障また労働基準法においても保護されなくなってしまう恐れがあります。

自分の立場がしっかりと把握出来ていない場合、まずは契約内容をしっかり確認する事が先決です。

年俸制で残業代請求をする際に有力な証拠

次に、ここでは年俸制で未払いの残業代が請求できる条件と、請求するために必要・有効な資料には何があるのかをご紹介いたします。

未払い残業代の請求には時効がある

まず、大前提となりますが未払い残業代の請求には時効があります。

その時効の期間とは「3年」となります。
3年以上を遡って請求する事は不可能となります。

ですので、弁護士や労働組合に相談するをする場合は時効の期間をしっかり押さえた上で行動に移しましょう。

2020年の労働基準法改正によって2020年4月1日以降に発生する(した)残業代については時効期間が今までは「2年」だったのですが「3年」となりました。

未払い残業代の請求に必要な資料

  1. 残業の事実を証明する資料
  2. 請求額を計算するための資料及び未払いの証拠となる給与明細

これらを具体的にご紹介いたします。

1.残業の事実を証明する資料

  • タイムカード、業務日報などの出勤・退勤記録
  • 業務用パソコンのログイン・ログオフ記録
  • 社員証(IDカード)の記録
  • スマホアプリのGPSデータ
  • 業務メールの送信履歴
  • 日報や手帳への労働時間等の記載

タイムカードなどの会社付帯のものや保管されているもの、パソコンのログイン・ログオフ記録、メールの履歴などはあらかじめ記録として取得しておくことをおすすめいたします。

2に関しては会社就業規則や雇用契約書のコピーなどが有効となります

就業規則は、本来であれば雇用契約を交わした人は誰でも見る事の出来る場所に置いてあるためしっかり確認しておきましょう。

年俸制で時間外労働を請求する手順

未払い残業代を請求する方法には2点あります。弁護士、もしくは労働組合(ユニオン)の2つです。

弁護士に関してはある程度理解されている方、多いのではないでしょうか。

今回は聞き馴染みの少ない労働組合(ユニオン)の説明を具体的に紹介させて頂きます。

労働組合(ユニオン)とは

労働組合を分かりやすく説明すると、企業と対等な関係を築くために結成された労働者の団体の事をいいます。

会社は労働者に比べ立場も経済力も高い事が当たり前なので、労働者が会社と交渉する事が困難な場合が多く、個人だと消耗して諦めてしまうケースが多くあります。

そこで、労働組合は労働者が団結し会社が無視できない集団として結成したという経緯があります。

個人で戦うより非常に現実的で、労働組合から個人へのサポートを受けられるという大きなメリットがあります。

労働組合というと結局、企業の中にあるイメージですが大手の企業でない場合、そもそも労働組合を持っていない企業もたくさん存在します。

そのような労働組合がない企業で働いている場合は企業の垣根を超えた「合同労働組合」に加入して団体交渉をする事が出来ます。

労働組合(ユニオン)を利用した残業代の請求

労働組合を通じた残業代請求は個人と個人という状況ではなく、ユニオンと企業という構図で行われます。

弁護士とは違った切り口での交渉手段やノウハウを駆使して交渉を進めていきます。

もし労働組合を通じた未払い残業代の請求がうまくいけば残業代を支払ってもらえるだけでなく、労働環境の改善も大いに期待できます。
ただしあくまでも「団体交渉」なので合意がなされなかった場合は裁判に持ち込まれるケースもあります。

また労働組合を通じた交渉が妥結された書類を労働協約といい、就業規則より強い効力を持ちます。

制度変更の無い和解をした場合も労働協約という書類が成果物となります。

まとめ

いかがだったでしょうか。

結論は冒頭で述べておりますが、

年俸制だからとって残業代が出ないという事は一切ありません。

改めて、自分の契約内容を今一度確認してみる事を強くおすすめいたします。

年俸制は賞与も残業代も込み…ではありません

ただ単純に給与形態が違うだけなのです。

みなし時間制だと言っても、規定を超えれば残業代として支払わなければなりません。

残業代が支払われないという事は違反行為なのです。

未払い残業代が支払われていない事が分かり、会社にも将来性を感じず魅力もないのであれば会社から身を引く事を念頭に置きつつ証拠を集め、請求するのも良い決断です。

未払い残業代を請求したい時はまず労働組合(ユニオン)を利用する事が先決です。

弁護士に先に相談するより労働組合にます相談をした方が内部の状況や交渉のノウハウの面からも有効な場合が多いからです。

デメリットとなる部分はほとんどなく、むしろメリットを多く感じられる部分ではないでしょうか。

企業の中に労働組合がある場合はどの弁護士よりも企業の状況を理解している立場でありつつ企業と対等に戦える立場だからです。

年俸制で未払いの残業がある方は是非、労働組合が自身の企業にある時は弁護士よりまずは労働組合を使う事をおすすめします。

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この記事を書いた人

過去の会社で弁護士を通じて未払いの残業代を請求し2年分の残業代の奪還に成功しました!この過程で、自身と同じような悩みを抱える人がまだまだ多く存在することに気づき、みんなの悩みや疑問を解決するために役立つ情報を発信します!

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