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パワハラによる労災認定を得るための条件や申請手順まとめ
2020年、労災の認定基準が改正され、パワハラ(パワーハラスメント)の項目が追加されました。
これに伴い、会社で身体的攻撃、精神的攻撃などを受けたパワハラの被害者が労災申請できるようになっています。
- パワハラ労災の認定基準
- 労災認定までの申請手順
- パワハラ労災認定に関する疑問
- パワハラによる慰謝料を請求について
このページでは、上のような流れに沿ってパワハラ、労災について解説していきます。
労災認定の基準にパワハラが追加された
まずは労災について解説していきます。
そもそも労災とは
「労働災害」のことを指す労災は、通勤中や業務中に発生した事故やトラブルによるケガや病気のことを言います。
労災保険料は会社がすべて負担する仕組みで、労災の申請があれば労働基準監督官が認定し、国が補償してくれます。
また、残業中や休憩時間中、もしくは出張などで事業所の外にいたとしても、事業主の管理下にあると認められるケースなら労災認定されることもポイントです。
労災の認定基準に「パワハラ」が追加
さて、2020年6月、労災の認定基準に「パワハラ」が追加されました。
今までは、「達成が難しいノルマが課された」「不当に退職を強要された」といった項目は存在していたものの、それがパワハラであるという表現はされていませんでした。
しかし、改正が行われたことにより「上司等から、身体的攻撃、精神的攻撃等のパワハラを受けた」という事柄でも評価されるようになり、労災請求が従来と比べて容易になることに期待できます。
パワハラの定義
そもそもパワハラとは、以下のような条件を満たすことで認められます。
- 優越的な関係に基づいて(優位性を背景に)行われること
- 業務の適正な範囲を超えて行われること
- 身体的若しくは精神的な苦痛を与えること、又は就業環境を害すること
これからパワハラ労災認定の申請を行う上で必要となる条件ですので、押さえておきましょう。
パワハラによる労災認定3つの基準
パワハラによって労災認定されるためには、以下の3つの要件を満たす必要があります。
【参考】精神障害の労災認定要件
- 認定基準の対象となる精神障害を発病していること
- 認定基準の対象となる精神障害の発病前おおむね6ヶ月の間に、業務による強い心理的負荷が認められること
- 業務以外の心理的負荷や個体側要因により発病したとは認められないこと
各項目について、詳しく見ていきましょう。
①認定基準の対象となる精神障害を発病していること
【参考】疾患の種類
- 症状性を含む器質性精神障害
- 精神作用物質使用による精神および行動の障害
- 統合失調症 統合失調症型障害および妄想性障害
- 気分[感情]障害
- 神経症性障害、ストレス関連障害および身体表現
- 生理的障害および身体的要因に関連した行動症候群
- 成人のパーソナリティおよび行動の障害
- 精神遅滞〔知的障害〕
- 心理的発達の障害
- 小児期および青年期に通常発症する行動および情緒の障害、特定不能の精神障害
上記の中で、仕事に関連する代表的な疾患は「鬱病」「統合失調症」「急性ストレス障害」「PTSD」などです。
メンタルクリニックなどの主治医による診断書や診療内容、関係者への聴き取り内容などによって判断されますので、不眠症やその他ストレス疾患でも認定される事例もあるでしょう。
②発病前の6か月の間に業務による強い心理的負荷が認められること
業務による心理的な負荷(ストレス)を「強」「中」「弱」の三段階で評価し、「強」だと認められた場合に労災認定されます。
心理的負荷の総合評価の視点は上で挙げた5つで、これらの要素から心理的負荷の強度が評価されることがポイントです。
- 指導・叱責等の言動に至る経緯や状況
- 身体的攻撃、精神的攻撃等の内容、程度等
- 反復・継続など執拗性の状況
- 就業環境を害する程度
- 会社の対応の有無及び内容、改善の状況
また、これらの観点から「強」と評価されることの多い事例としては、以下のようなものが挙げられます。
- 上司等から、治療を要する程度の暴行等の身体的攻撃を受けた場合
- 人格や人間性を否定するような、業務上明らかに必要性がない又は業務の目的を大きく逸脱した精神的攻撃
- 心理的負担としては「中」程度の身体的攻撃、精神的攻撃等を受けた場合であって、会社に相談しても適切な対応がなく、改善されなかった場合
なお、「上司等」とありますが、職務上の地位が上位の人だけでなく、同僚や部下など部下の場合でも「強」と認定されるケースもあります。
さまざまな事例が出ていますので、会社内の人間関係や状況を整理してまとめておくと良いでしょう。
③業務以外の心理的負荷や個体側要因により発病したとは認められないこと
外部からのストレスによってPTSDや不眠症、鬱などにかかっても、仕事に関係ないことから起こった場合は認められないことに注意しましょう。
労災として認定されるには、客観的な証拠を元に「職場でのストレス」が原因だと認められる必要があります。
被害を裏付ける資料としては、タイムカード、勤怠表、PCの履歴、発言の録音、周囲の人による供述書などが必要です。
また、発病直前の2ヶ月連続して1月あたり約120時間以上の時間外労働を行った場合なども「強」として認定されるケースがあります。
パワハラと同時にセクハラを受けていたとされるケースなど、1人ひとり被害内容は異なります。
そのため、独自で判断せず弁護士や法律に詳しい知人など第三者に相談することをおすすめします。
労災認定までの申請手順
労災申請のための基礎知識
労災保険の給付を受け取るためには、労働基準監督書に申請書を提出しなければなりません。
なお、労災保険といっても、事例によって給付の内容が異なりますので注意しましょう。
労災保険の種類 | 補償内容 |
---|---|
療養が必要な場合 | 療養補償 |
休業した場合 | 休業補償 |
労災により療養し、1年半を過ぎても治癒せず傷病等級(第1~3級)に該当する場合 | 傷病補償 |
労災により負った傷病が治癒しても一定の障害が残った場合 | 障害補償 |
業務中または通勤中の事故で死亡した場合 | 遺族補償 |
業務中または通勤中の事故で死亡して葬祭を行った場合 | 葬祭料 |
一定の障害によって傷病補償または障害補償を受給し、介護を受けている場合 | 介護補償 |
そして、労災認定されるまでの手順としては、以下のステップを踏む必要があります。
- 書類の準備・作成
- 医師から証明書をもらう
- 書類を提出する
1.書類の準備・作成
療養補償を請求する場合、「療養補償給付たる療養の給付請求書」が必要となります。
- 労災保険指定医療機関で療養した場合:5号用紙
- 労働保険指定医療機関以外で療養した場合:7号用紙
まずは必要となる用紙を入手し、作成していきましょう。
なお、療養補償以外で必要となる書類については、以下からダウンロードできます。
2.医師から証明書をもらう
労働保険指定医療機関以外で療養した場合については、医師からの証明書が必要となります。
労災申請する旨を伝えることで対応してもらえますので、まずは病院に問い合せてください。
3.書類を提出する
書類の準備ができたら、所定の場所に提出しましょう。
- 5号用紙(労災保険指定医療機関で療養した場合):病院に提出
- 7号用紙(労働保険指定医療機関以外で療養した場合):労働基準監督署に提出
記入した用紙の種類によって提出先も異なりますので、事前にチェックしておくと良いでしょう。
よくある疑問
Q.1パートやアルバイトでも認定される?
労基法にもあるとおり、労働者は「この法律で「労働者」とは、職業の種類を問わず、事業又は事務所(以下「事業」という。)に使用される者で、賃金を支払われる者」と定義されています。
つまり、パートやアルバイトなどの雇用形態にかかわらず全ての労働者が労働保険の対象になっているということです。
正社員や派遣社員のみならず、パートやアルバイトとして働いている人でも労災に認定される権利があるため、安心してください。
Q.2退職後でも申請はできるの?
労働基準法第83条、労災保険法第12条の5によると、「補償を受ける権利は、労働者の退職によって変更されることはない」と定められています。
つまり、退職後に労災申請することも可能だということです。
ご自身が労災保険を受け取れる資格をお持ちかどうかは、以下の時効についても参考にしてください。
Q.3パワハラに時効ってあるの?
労災保険の給付には、時効が存在します。
給付金の種類によって時効までの期間は異なりますので、十分気を付けてください。
労災保険の種類 | 請求権発生のタイミング | 時効までの期間 |
---|---|---|
療養(補償)給付 | 療養の費用を支出した日ごとに請求権が発生 | その翌日から2年 |
休業(補償)給付 | 賃金を受けない日ごとに請求権が発生 | その翌日から2年 |
遺族(補償)給付 | 被災労働者が亡くなった日の翌日から | 5年 |
未支給の保険給付・特別支給金 | それぞれの保険給付と同じ | それぞれの保険給付と同じ |
傷病(補償)年金 | 請求時効なし | 請求時効なし |
障害(補償)給付 | 請求時効なし | その翌日から2年 |
療養(補償)給付 | 傷病が治癒した日の翌日から | 5年 |
介護(補償)給付 | 介護を受けた月の翌月の1日から | 2年 |
このように、時効が成立してしまうまでの期間とタイミングは異なります。
「パワハラにで休職したが、ストレスで寝たきり状態…」
「会社のことを思い出すと症状が悪化してしまう…」
といったケースも考えられますが、時効が成立してしまえば労災の請求ができなくなってしまうため、注意しましょう。
パワハラによる慰謝料を請求したい場合はユニオンへ相談を
ねこの手ユニオンとは
ねこの手ユニオンとは、有名企業・経営者弁護士・社労士・会計士など労働問題交渉のプロが在籍する労働組合です。
- 退職代行
- 未払い残業代の請求
- パワハラ・セクハラの相談、対応
- 不当解雇
- 会社を退職後、独立する人への設立支援
などあらゆる労働問題に取り組んでおり、会社への交渉力・対応力にも定評があります。
一般的な労働組合は、加入する際の加入金、組合への組合費が必要になりますが、ねこの手ユニオンの場合は加入金・組合費が無料なのも嬉しいポイントです!
泣き寝入りせず、周りを頼ることも大切
このページでは、パワハラに悩む方に向けてパワハラの労災認定基準、申請手順などをご紹介しました。
パワハラで強い心理的負荷を受けると、PTSDや鬱、不眠症、急性ストレス障害、統合失調症などあらゆる精神障害が引き起こされてしまうケースがあります。
このような状況の全ての労働者(パート・アルバイト含む)が受け取れる権利が労災です。
- 認定基準の対象となる精神障害を発病していること
- 認定基準の対象となる精神障害の発病前おおむね6か月の間に、業務による強い心理的負荷が認められること
- 業務以外の心理的負荷や個体側要因により発病したとは認められないこと
パワハラによる労災申請の場合、上記3つの条件を満たせば、給付金を請求し受け取ることができます。
とはいえ会社を辞めることを強いられるほど疲れ、ダメージを負っているパワハラ被害者の方は、労災認定のために動くことも億劫でしょう。
そのような方には、ユニオン(外部労働組合)への相談をおすすめします。
労働紛争のプロがあなたの労働問題を解決してくれますよ!
理不尽なパワハラに遭ってしまった方は、労災認定のために動く権利があります。
時効などで泣き寝入りしてしまうことにならぬよう、ねこの手ユニオンにご相談ください。