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内定取り消しの全て!法的背景や理由、具体的な3つの対処法を解説
「内定取り消し」という言葉は、春の新生活を控えた就職活動の時期になると、新聞やニュースで耳にするようになります。
いくつもの試練を乗り越え、ときには涙を流しながら、長い時間をかけて得た内定。それが一瞬で無に帰すかのような、まさに恐怖のフレーズではないでしょうか。
この「内定取り消し」には実は違法になりやすいケースと、合法になりやすいケースがあることをご存知でしょうか?
もし違法なケースにあたるとしたら、あなたにはしっかりと対処する権利があります。つまり、企業に対して立ち向かうことが可能なわけです。
本記事では「内定取り消し」の意味や労働法から見た観点をお伝えしたうえで、違法になるケースと合法なケースを解説していきます。
内定取り消しという困難な状況に直面して困惑している方であれば、この記事が一助になるでしょう。
内定取り消しは違法?
結論から言うと、「内定取り消し」は、一般的には労働契約法に適合していれば違法性はありません。
しかし、もし企業が労働契約法に違反して内定を取り消した場合、それは違法行為です。
そのような状況に直面した場合、あなたはそれを回避したり、適切に対処する権利があります。
労働契約法第16条には次のような記載がされています。
解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。 |
引用:https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=419AC0000000128
しかし、この規定は内定取り消しにも適用されるのでしょうか? 適用される理由について次節より確認していきましょう。
そもそも内定とは?
内定とは、従業員を新しく採用するときに、勤務開始前に入社の約束をすることです。
一般的に、企業が求職者に内定通知を出して、求職者と誓約書を結んだ場合に内定が成立します。
ただし、この「内定」の定義は法律で明確に定められているわけではなく、過去の判例によって解釈されています。
具体的には「始期付解約権留保付労働契約」です。
これは、労働契約が始まる期日が決まっていて(始期付)、その期日までの間、企業が一定の条件下で契約を解約できる権利を保有している(解約権留保付)状態を指します。
つまり内定とは、労働契約の開始時期が決まり、企業が一定の範囲内で契約を解除できる権利を保持した状態の労働契約のことを指します。
ざっくり言うと、条件付きの労働契約です。
条件付きとは言え、労働契約が守られているには違いがないため、内定を出した時点で内定者は労働契約法で守られるわけです。
内定と内々定との違い
内定と内々定はどちらも採用の意思を表明しますが、その法的な位置づけは大きく異なります。
内定とは企業が正式に求職者を採用する意志を明示し、実質的な労働契約のこと。一方内々定は、それよりも一歩手前の段階を示し、正式な労働契約にはなりません。
内々定とは、企業が求職者に対して「採用する予定だ」と伝える通知のことです。
特に、最終面接に合格した後に入社までの期間が空いている際に、企業から通知されるケースが多く、口頭で済まされる場合も多くあります。
仮に契約書を結んだとしても、その通知が法的に拘束力を持つわけではない点には注意してください。
したがって、仮に内々定が取り消されたとしても、それは法律上、違法とはされません。
しかし、一度内々定を出した企業が軽々しく取り消すことは許されないというのが通説です。
内定取り消しが違法になる可能性が高い場合
前述した通り、企業が内定を取り消すには合理的な理由が必要となります。
一例になりますが、以下のケースであれば合理性に欠けるため、違法だと判断されるでしょう。
- 差別的な理由での内定取り消し
- 内定者研修に参加しなかった場合
- 内定者に重大な経済的損害が発生する場合
詳細は以下の通りです。
差別的な理由での内定取り消し
企業が性別、年齢、国籍、宗教、障害などの差別的な理由で内定を取り消した場合、その行為は違法となる可能性が高いです。
労働基準法や人権に関する法律に違反するでしょう。
内定者研修に参加しなかった場合
企業が実施する内定者研修は、新卒者にビジネスマナーや業界の知識、企業の価値観などを学ぶ機会となります。
しかし、その参加を法的に強制することはできません。
特に学生の場合、テストやゼミで忙しいケースもあり、研修に参加できないことも考えられます。
そんな中、研修への不参加を理由に内定を取り消す行為は、一般的に人事権の乱用と見なされ、違法とされる可能性が高くなります。
企業は、学生の現状を考慮し、研修の日程を調整するなどの配慮をするべきです。
何より内定取り消しは最終的な手段であり、できるかぎり回避しましょう。
内定者に重大な経済的損害が発生する場合
内定者が重大な経済的損害を被るリスクがある場合、内定の取り消しは違法と判断されやすくなります。
たとえば、内定を受けたあとに、企業の近くに引越ししたり、新しい職場で必要とされる資格を取得するために時間やお金を投資してしまったりする場合などです。
会社から遠方に住んでいる求職者に内定を出す場合や、特定の資格が必要な職種の場合、求職者は前もって準備を始めるでしょう。
このような状況で企業が軽々しく内定を取り消すと、これは社会通念上相当とは言えない行為となり、違法と判断される可能性が高まります。
内定取り消しが合法になりやすい理由
次に内定取り消しが合法になりやすい理由を見ていきましょう。
内定者側と企業側に切り分けると、以下のようになります。
【内定者側】内定取り消しが合法になりやすい5つの理由
内定者側に以下のような事由があると、内定取り消しの妥当性が認められやすくなります。
- 内定者が学校を卒業できなかった場合
- 内定者が必要な入社に資格を取得できてない場合
- 内定者が会社にウソの経歴を伝えた場合
- 内定者が病気やケガで仕事ができなくなった場合
- 内定者が犯罪や不適切な行動を起こした場合
内定者が学校を卒業できなかった場合
内定者が単位が足りないといった理由で卒業ができない場合、その内定は無効になる可能性が高いです。
その理由とは、卒業が企業による職務条件を満たす重要な前提となっているからです。
新卒採用の際、企業は求職者の卒業を前提として内定を出します。
そのため、卒業が不可能となれば、内定を取り消すほかありません。
内定者が必要な入社に資格を取得できてない場合
就業条件として必要な資格が明記されている職種では、内定者が指定の期日までに該当の資格を取得できなければ、企業はその内定を取り消せます。
応募や面接の段階で必要な資格は、通常明示されているはずです。
資格取得が必要な職種の場合、資格がなければそもそも内定を得られない可能性も考えられます。
しかし、企業が「内定は出すが、指定の期日までにこの資格を取得してほしい」といった条件を設けるケースもあります。
このような場合、期日までに必要な資格を取得できなかった内定者は内定取り消しの対象です。これは社会通念上、理解される範囲内の事象であると言えるでしょう。
内定者が会社にウソの経歴を伝えた場合
企業は信頼に基づいて内定を出します。
そのため、内定者がウソの経歴を伝えていたと発覚した場合、その信頼関係が壊れるため、企業は内定を取り消すことが可能です。
ウソの内容の重大さにより、内定取り消しの可能性が変わります。
重大なウソであれば、取り消しの合法性は高まります。
たとえば、自己PRで販売に貢献できる営業経験があると述べたが、実際にはその経験がなかったというケースでは、企業の期待を大きく裏切る行為となります。
内定者が病気やケガで仕事ができなくなった場合
内定者が病気やケガで仕事ができなくなった場合も、企業は内定を取り消せる可能性があります。
ただし、ただし、一時的な病気や軽度のケガである場合、通常は内定は取り消されません。
また重大な病気やケガでも、回復見込みがある場合や回復までの期間が短い場合は、企業は内定取り消しの代わりに休職や入社延期を提案する場合があります。
内定者が犯罪や不適切な行動を起こした場合
内定者が犯罪を犯したり、不適切な行動をとったりした場合は、企業はその内定を取り消せます。
当然ながら、企業がそのような人材を採用するとクライアントに心配がかかるなどデメリットしかありません。
たとえば、下記のようなケースです。
- 暴力事件や殺人で逮捕された場合
- SNSに社会人として不適切な投稿をした場合
- 会社の機密情報を無断で取得した場合
これらの行為はすべて内定取り消しの十分な理由となります。
【企業側】内定取り消しが合法になりやすい理由
企業側の原因で、内定取り消しが合法になる場合があります。
それは「会社が経済的な困難に直面し、経営の健全化のために人員削減や整理解雇が必要となった場合」などが該当します。
具体的には、以下の整理解雇の要件が満たされている必要があります。
整理解雇の要件 |
内容 |
人員削減の必要性 |
企業が経済的な理由などで人員削減が必要となったと認められること |
解雇回避の努力 |
企業が人員削減や解雇を回避するための措置を取ったことが認められること |
人選の合理性 |
整理解雇の対象者の選定が公正かつ合理的に実施されたこと |
解雇手続きの妥当性 |
労働組合などとの協議が適切にされたこと |
上記4つの要件が満たされている場合に、内定の取り消しは法的に合理的なものとみなされるようになります。
内定取り消しの過去事例
ここからは、過去に起きた内定取り消しの事例をチェックしていきましょう。
大日本印刷事件
大日本印刷事件は、企業が内定を取り消す際に必要な「合理的な理由」の具体例を示した重要な判例となりました。
この事件は、大手印刷会社「大日本印刷」が、内定者に対して「陰気な印象」を理由に内定取り消しを通告したところ、内定者がこれを不服として訴訟を起こしたものです。
裁判は最高裁まで争われ、最終的には内定者の主張が認められました。
内定取り消しは、合理的な理由に基づかないと違法だと示すものとなり、内定取り消し問題の解決において参考にされる場合があります。
キモイオヤジだった事件
人事部長を「キモイオヤジだった」とFacebookに書き込んでしまい、内定取り消しになった事件です。
この事例から、私たちが学ぶべきことは、SNSの使用方法には注意が必要だということ。
企業の人事部は、採用候補者のSNSアカウントをチェックする場合があります。
本名でSNSを使用している場合、採用者があなたのプライベートな投稿を見る可能性があることを念頭に置いてください。
仕事に対する姿勢や人間性を評価する1つの手段として、SNSが使われる場合もあるため、注意しましょう。
フリーランスで働く人でも、クライアントからSNSアカウントをチェックされるケースもあるわけです。
しかし、本当にキモかった可能性もゼロではありません。面接の場として相応しくない質問があったのであれば、
- このようなことを聞かれて気分が良くなかった
- 面接官の身だしなみがなってなくて不衛生に感じた
などと具体的に書いた方が、内定取り消しにならなかったかもしれません。
過去にAV出演が発覚した時間
国立大学を卒業し、IQ130を持つとされる元AV女優が、金融大手のゴールドマン・サックスから内定を得たものの、その内定が後に取り消された事件です。
ゴールドマン・サックスは、毎年、競争率が高く、一握りの求職者だけが採用される厳しい選考を行っています。
この女性の内定が取り消されたのは、匿名の通報があったからです。通報者は、彼女が元AV女優であることを会社に伝えました。
この結果として、ゴールドマン・サックスは彼女の内定取り消しを決定。理由としては、彼女の経歴が就業規則に違反するリスクがあったためです。
この事件は、過去の経歴が現在や未来のキャリアにどのように影響するか、そして、企業が採用を決定する際に何を評価するかについての議論を巻き起こしました。
内定取り消しになった場合の対処法
万が一、あなたが内定取り消しを受けた場合、以下の対処法を取ることをおすすめします。
- 内定取り消しの理由を確認する
- 内定を証明するものを保存する
- 諦めてほかの転職先を探す
- 大学や外部機関に相談する
適切な行動をとることで、内定取り消しを回避したり、場合によっては慰謝料を請求することも可能です。以下でそれぞれの項目について詳しく見ていきましょう。
内定取り消しの理由を確認する
内定取り消しの理由は、必ず企業から確認しましょう。
労働契約法では、内定者には従業員と同等の権利が認められているため、無理由での内定取り消しは許されません。
口頭での説明だけではなく、後の証拠として書面やメールでの明示を求めることも重要です。
内定を証明するものを保存する
内定を証明する書類やメールは、紛争が起こったときのために必ず保存しておくべきです。
内定通知が電話で行われた場合は、後で証拠にするために、以下のようなメールを送りましょう。
「先ほどはお電話ありがとうございます。内定のご連絡をいただき大変嬉しく思います!」
と送っておけば、証拠と判断されやすくなります。
後からそもそも内定を出していないと言われるリスクがなくなります。内定の事実を記録しておきましょう。
大学や外部機関に相談する
内定取り消しに遭遇した場合は、速やかに学校のキャリアセンターや労働問題に詳しい外部の機関に相談しましょう。
1人で対応するよりも、経験豊富な専門家からのアドバイスが得られます。
外部機関であれば、弁護士やハローワーク、労働組合などがありますが、おすすめは労働組合「ねこの手ユニオン」です。
完全成果報酬だから相談は無料です。
諦めてほかの転職先を探す
内定取り消しを受けた会社と争うことも選択肢の1つですが、それには時間や体力、お金がかかります。
そのような会社とは関わりたくないと考える場合や、ほかにも有望な就職先がある場合は、再度就職活動を再開するという選択肢もあります。
内定取り消しをされたら「ねこの手ユニオン」がおすすめ
内定取り消しの相談先はいくつかありますが、なかでも「ねこの手ユニオン」という労働組合(ユニオン)がおすすめです。
- 企業は労働組合からの交渉を断れない
- 相談から裁判まで一括して代行してくれる
- 24時間いつでも受付している
- 着手金無料で完全成果報酬だから安心できる
上記4点の理由をそれぞれお伝えしていきます。
企業は労働組合からの交渉を断れない
労働組合からの団体交渉は労働組合法で保障されているため、企業は断れません。従業員一人ひとりの立場は弱くても、労働組合には団結して会社と交渉できる権利があります。
企業はこの団体交渉を正当な理由なしで無視すると、50万円以下の過料に処されてしまうほど強い力なのです。
そのため、労働組合「ねこの手ユニオン」に相談すれば、対等な立場で会社と話し合いができるようになります。
相談から裁判まで一括して代行してくれる
ねこの手ユニオンには、弁護士、社会保険労務士、行政書士といった法律のきちんとした専門家が運営に携わっています。各分野のエキスパートが相談から各種手続きまでしっかり対応してくれるため、安心できますね。
24時間いつでも受付している
ねこの手ユニオンは、LINEやメールから24時間いつでも問い合わせできます。スマホやパソコンから気軽に相談できます。
着手金無料で完全成果報酬だから安心できる
ねこの手ユニオンは完全成果報酬を採用していて、着手金・相談料・組合加入費・組合費などは必要ありません。
無事に解決できたときに解決金の3割を支払う仕組みです。結果が出なかったときに支払いは発生しないため、安心できます。
内定取り消しに関するFAQ
最後に、内定取り消しに関するよくある質問をまとめました。
内定取り消しの手当てはいくらくらいですか?
内定を取り消す場合、解雇予告同様の措置を取る必要があります。
つまり、労働基準法第 20 条に「少なくとも 30 日前 の予告あるいは 30 日分以上の平均賃 金(解雇予告手当)を支払う義務が生じます」と明記されている通りです。
詳細は「【例あり】解雇予告手当の計算方法|アルバイトやもらえない場合は?」を参考にしてください。
内定取り消しの示談金の相場は?
内定取り消しが違法な場合、慰謝料として50万円~100万円が相場です。
ただし、内定取り消しの理由や企業側の姿勢などによって、前後するケースがあります。
また、内定通知後に以前の勤務先を退職した場合は、大きな不利益を被ることになるため、金額が増額される傾向があります。
まとめ:内定取り消しされたら初動が大切
企業が求職者に内定を出すと、従業員とほぼ同じ権利を取得していると見なされます。
そのため、内定を取り消すことは、基本的には違法です。
労働基準法第 20 条に基づき、 30 日前 の予告あるいは 30 日分以上の平均賃 金(解雇予告手当)を支払う必要があります。
ただし、以下のケースは例外です。
- 内定者が学校を卒業できなかった場合
- 内定者が必要な入社に資格を取得できてない場合
- 内定者が会社にウソの経歴を伝えた場合
- 内定者が病気やケガで仕事ができなくなった場合
- 内定者が犯罪や不適切な行動を起こした場合
といった場合は合理性が認められやすくなります。
内定取り消しを受けた場合、自身の立場を守れるように適切な対応を取りましょう。
内定取り消しの理由を確認し、証拠となるものを保存し、大学や外部機関に相談し、他の転職先を探すなど、対策を講じることが重要です。
内定取り消し問題は、求職者だけでなく、採用する企業にとっても大きなリスクを伴います。
法的な問題だけでなく、企業の評価やブランドイメージにも影響を及ぼすでしょう。
適切な採用活動を行い、内定取り消しを回避することが、最終的には双方にとって最善の結果をもたらすことになります。