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パワハラ防止法とは?労働者がパワハラを受けた時の相談窓口も紹介
パワハラ防止対策の義務化は2020年6月に大企業から施行されました。
本記事では、パワハラ防止法改正の背景や事業主が講じるべき措置、事例をまじえたパワハラの定義について詳しく解説していきます。
パワハラ防止法とは?
「改正労働施策総合推進法」が正式名とされているパワハラ防止法は、雇用管理上、必要な措置を講じることが事業主の義務とされた法律です。
厚生労働省が2016年に実施した調査では、過去3年以内にパワハラを受けたことがある者が32.5%にも及ぶことを発表しました。いじめや嫌がらせの相談件数も2018年度には8万件を超えています。
そのような中、2019年6月に女性の職業生活における活躍の推進などに関する法律等の一部を改正する法律が成立。
「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」が改正され、パワハラ防止対策が事業主に義務付けられたのです。
大企業については2020年6月施行、中小企業は2022年4月施行開始です。
なお、大企業は中小企業以外の企業と定義されます。中小企業は、下記の通りで①②のいずれかを満たすものを指します。
業種 | ①資本金の額又は出資の総額 | ②常時使用する従業員の数 |
---|---|---|
小売業 | 5,000万円以下 | 50人以下 |
サービス業 | 5,000万円以下 | 100人以下 |
卸売業 | 1億円以下 | 100人以下 |
その他 | 3億円以下 | 300人以下 |
参考:Q1:中小企業基本法の中小企業の定義と小規模企業の定義を教えてください。
パワハラ防止法に違反した場合の罰則は、明確に設けられていません。
しかし行政が必要であると判断した場合は、事業主に対して指導または勧告を行います。内容によっては企業名が公表されることもあるでしょう。
パワハラ防止法で規定されているパワハラの定義
では、なにをもって「パワーハラスメント」と定義するのでしょうか。
「労働施策総合推進法」では下記の通り明記されています。
(雇用管理上の措置等)
第三十条の二:事業主は、職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であつて、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものによりその雇用する労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。
つまり、職場において
- 優越的な関係を背景とした言動であること
- 業務上必要かつ相当な範囲を超えていること
- 労働者の就業環境が害されていること
以上3つの要素を客観的に見て、すべて満たすものをパワーハラスメントとしています。
ここでいう職場とは、労働者が業務を遂行する場所を指します。そのため、就業場所に限らず、出張先や接待の場も当てはまることがあるのです。
また労働者は、正社員(正規雇用労働者)に限りません。契約社員やアルバイト、パートタイム従業員など、非正規雇用労働者も対象となります。
パワハラは、上司からされた行為が該当するとイメージされる方も多いかもしれません。しかし「優越的な関係を背景とした」と記載があるように、上司に限らず同僚や部下の場合でも対象となります。
パワハラに該当する事例
パワハラの定義を説明しても、実際に起きた事例はさまざまなものがあるでしょう。
自分はそうでないと思っていても、客観的に見たらパワハラと認定される場合もあります。逆に、自分がパワハラだと感じていても、定義上はそうではないこともあるでしょう。
パワハラに該当する代表的な言動と考えられる事例を紹介します。
※すべて優越的な関係を背景として行われていることが前提
- 身体的な攻撃
例)相手を殴ったり、蹴ったりする
物を投げて身体にぶつける
いきなり胸ぐらを掴まれ、説教される など - 精神的な攻撃
例)人格を否定する言動をさせる(お前は無能だ、など)
必要以上に長時間にわたる厳しい叱責を繰り返し行う
他の労働者の前で威圧的な叱責を繰り返し行う など - 人間関係からの切り離し
例)1人の労働者に対し、集団で無視をし孤立させる
長時間別室に隔離したり、自宅で研修させたりする など - 過大な要求
例)業務とは関係ない私的な雑用の処理を強制的に行わせる
達成不可能なノルマやひとりではできない量の仕事を常に与えられる など - 過小な要求
例)嫌がらせのために仕事を与えられない
担当部署以外の業務を必要以上に強要される など - 個の侵害
例)職場以外でも継続的に監視をされる
欠席理由をしつこく聞かれる
不在時に許可なく机の中を物色される など
それぞれの状況によって判断が異なることもありえます。後述する「事業主に相談等をした労働者に対する不利益取扱いの禁止」があるため、判断に困る場合はひとりで抱え込まずに社内担当者や専門家へ相談するようにしましょう。
企業に義務付けられる措置
パワハラ防止法において、企業にはどのような措置が義務付けられているのでしょうか。
事業主が雇用管理上講ずべき措置(義務)は下記の通りです。
- 事業主の方針等の明確化及びその周知・啓発
例)社内報で周知したり、社内研修をおこなったりする。 - 相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
例)適切に対応できる相談窓口担当者を定め、周知する。 - 職場におけるパワーハラスメントに係る事後の迅速かつ適切な対応
例)事実関係を迅速かつ正確に確認し、措置を適正に行う。また再発防止に向け措置を講じる。 - そのほか併せて講ずべき措置
例)プライバシー保護、不利益取扱いの禁止 など
上記以外にも、一元的な相談体制の整備やハラスメントの根本的要因を解消するなど、実施が望ましいとされている取組みもあります。
パワハラについての相談を行ったり、措置に協力して事実を述べたりしたことで自分が解雇されるのではないか、と不安に思うひともいるでしょう。しかし、相談や協力を理由に不利益な取扱いをすることは、法律上禁止されていますので安心してくださいね。
パワハラ被害を受けたときの相談先は?
パワハラの事例については、前述した通りです。では、実際にパワハラ被害を受けたときはどこに相談すればよいのでしょうか。
- 家族や友人に相談する
- 社内の人事担当 / 内部監査担当に相談する
- 労働局に相談する
- ねこの手ユニオンへ相談する
内容によっては、家族や友人など周りのひとに相談するのもひとつの手です。自分の悩みを聞いてもらってスッキリしたい!ということであればおすすめできます。
ただし、家族や友人は専門家ではないので、残念ながら具体的な解決にはならないでしょう。
社内の人事は採用だけでなく、労務業務を兼任していたり、産業医と連携してメンタルヘルスケアをしていたりする場合もあります。また内部監査に内部告発することで、あなた以外の被害者が見つかることもあるかもしれません。
労働局も相談先のひとつです。会社の担当者ではらちが明かない場合、都道府県労働局環境・均等部(室)へ相談してみてください。
内容によっては会社へ事実確認をしたり、是正勧告を行ったりします。自分の職場をよく知らない人だからこそ、起きた出来事などを赤裸々に打ち明けられるでしょう。
相談料や加入費が無料の労働組合「ねこの手ユニオン」を利用するのもおすすめです。
上司や同僚の目を気にせず、気軽にLINEで相談できるのがよいですよね。24時間365日受付可能なので、いまパワハラでお悩みの方、上司や同僚の態度に対して「これはちょっとおかしいかも…」と思った方は、すぐに問い合わせができます。
事態が深刻化する前に、まずはねこの手ユニオンに相談することをおすすめします。