本記事にはプロモーションが含まれている場合があります
労働者が知っておくべき法定休暇の種類とは?
労働者が当たり前に得られる権利として、「休日」と「休暇」があります。
よく混同されることもあるのですが、この2つは異なった意味を持っています。
まず休日とは、労働者が労働義務を負わない日のこと。
完全週休2日制(土日祝)の企業であれば、毎週土日と祝日がこれに当たり、労働基準法では週に1日以上与えることと定められています。
一方で休暇とは、労働する義務がある日に、会社から労働義務を一時的に免除される日のことです。
この休暇は大きく、法律上定めのある「法定休暇」と法律上定めのない「法定外(特別)休暇」に区別されます。
とくに休暇は労働者の当然の権利であるにも関わらず、十分に周知されていないケースも見られます。
今回は上記のなかから、「法定休暇」について解説いたします。不当な扱いから身を守るためにも、ぜひ知識を身につけておきましょう。
労働基準法の法定休暇とは?
それではまず、法定休暇とは一体どんなものか見ていきましょう。
労働基準法では、「法定休暇」として雇用主から従業員へ休暇を付与することが義務付けられています。
ここにはさまざまな種類の休暇が用意され、一般的に馴染みのある「年次有給休暇」はその一つです。
それぞれに法律上、取得できる休暇期間に最低限の基準が定められていますが、会社はこれを上回る基準で休暇を付与することもできます。
ここで押さえておきたいのは、労働者に対して休暇を取得させなかった場合、雇用主は罰則に処せられることもあるということ。
罰則の対象としては、「年次有給休暇」をはじめ、後ほど詳しく紹介する「産前産後休暇」「生理休暇」が該当します。
たとえば「年次有給休暇」でいえば、2019年4月1日から雇用主に対し、 “10日以上の有給休暇が付与される全ての労働者に対し、毎年5日間、時季を指定して有給休暇を取得させること” が義務付けられました。
この義務に違反した場合、罰則として雇用主は30万円以下の罰金に処せられます。
一例ではありますが、5日間の有給休暇を取得させなかった対象者が100人いた場合、理論上、3,000万円以下の罰金に科される可能性があるといえるでしょう。
もう一つ、「年次有給休暇」以外の法定休暇については有給にするか、無給にするか、会社の判断で決められることも押さえておきたいポイントです。
自分の会社ではどのような扱いになっているのか、就業規則などで確認しておきましょう。
法定休暇の種類
それでは「法定休暇」にはどんなものがあるのでしょう。
代表的な以下の7種類について、詳しく説明していきます。
- 年次有給休暇
- 産前休業と産後休業
- 生理休暇
- 育児休業
- 子どもの看護休暇
- 介護休暇
- 介護休業
※「休暇」と「休業」の違いについて、労働基準法において明確な区別はありません。
ただ一般的に、「休暇」は1日単位で取得するなどスポット的な休み方を指し、「休業」は連続して「休暇」を取得するような使われ方をされています。
①年次有給休暇
これまでにも簡単に触れてきましたが、「年次有給休暇」は、その名の通り、有給にて取得できる「休暇」となります。
雇用者への付与義務として、労働基準法では「雇い入れ日から6ヶ月継続して勤務し、全労働日の出勤率が8割以上」である場合に、10日以上を付与しなければならないと定められています。
さらに1年経過するごとに付与日数は加算され、6年6ヶ月以上継続して働いている場合の付与日数は、毎年20日。「年次有給休暇」の時効は2年となり、1年で使いきれなかった分は翌年に繰り越されます。
とくにその特徴といえるのが、使用について雇用主の許可が必要でないことです。
そのため取得利用の目的を明確に記載する必要はなく、「私用のため」と記載しても問題ありません。
もう一つ注目しておきたいのが、業種・業態、さらには正社員・契約社員・アルバイトなど雇用形態は関係なく、上記の要件を満たせば「年次有給休暇」は付与されることです。
ただし、週所定労働日数が4日以下であり、週所定労働時間30時間未満の労働者については、所定労働日数に応じて付与日数が決められることになります。
②産前休業と産後休業
「産前休業」と「産後休業」は、通称「産休」と呼ばれ、女性社員から申し込まれた場合、雇用主は許可する義務があります。
これは労働基準法の「母性保護規定」で定められており、正社員や契約社員、アルバイトなど従業員の雇用形態は関与しません。
それぞれ詳しく見ていくと、「産前休業」では6週間以内(多胎妊娠の場合は14週間以内)の休暇を申請することが可能です。
休暇開始日は、出産予定日から逆算した日となります。
雇用主に申し出の拒否、期間の短縮・変更などは認められません。
ただし、本人の希望があり、本人が申請しない場合には出産前日まで働けます。
一方、「産後休業」においては、女性が申請するかどうかに関わらず、産後8週間の休暇を与えなければなりません。
ただし産後6週間以降、本人が働きたいと希望し、医師が支障がないと判断すれば、就業することが可能です。産後6週間までは、法律上、就業禁止となります。
休業中の給与支払い義務としては、「産前休業」「産後休業」ともに、法律上の定めがありません。
ただ会社での取り決めに関わらず、出産手当金の受け取りや社会保険料の免除など、健康保険によって経済的支援を受けられます
③生理休暇
「生理休暇」とは、生理を原因とする体調不良によって、就業が著しく困難な女性が休暇を申請し、与えられる休暇のこと。
労働基準法によって、会社には付与する義務が定められています。
申請時には医師の診断書など、事実を証明するものの提示は必要なく、口頭で問題ありません。
また生理期間の長さや症状の深刻さは一人ひとりで異なるため、取得日数を制限することは禁止されています。
1日に取得する時間として、半日や時間単位で申請し、取得することも可能です。
④育児休業
「育児休業」とは、子どもを養育する義務のある労働者が取得できる休暇のこと。
原則、子どもが1歳になるまで取得できます。
※子どもが1歳以降の期間に、申し込んだ保育所に入れないなど、要件を満たした場合には最長2歳まで延長が可能です。
「育児休業」の開始日は、出産した女性とその配偶者である男性で違いがあります。
まず女性の場合には、出産日から数えて58日目(産後休業が終了した翌日)から取得可能です。
男性の場合は、配偶者の出産当日となります。
雇用主は労働者に「育児休業」を申し込まれた際、原則として認める必要がありますが、労働者が以下のようなケースにおいては拒否することも可能です。
- 勤続年数が1年未満
- 申し出の日から1年以内に雇用契約が終了する予定
- 1週間の所定労働日数が2日以内
「育児休業」は休暇中の給与支払い義務が、会社に対して定められていません。
ただ、一定の要件を満たせば、雇用保険から育児休業給付金を受け取ることができます。
⑤子どもの看護休暇
「子どもの看護休暇」は、病気や怪我などで子どもの看護が必要な際、取得できる休暇のこと。
小学校就学前の子ども一人につき1年に5日間、最大10日間の休暇が与えられます。また2021年1月から、「改正育児・介護休業法」の改正によって、時間単位での取得が可能となりました。
正社員だけでなく、期間に定めのある労働者も対象です。ただし、以下に該当する場合は、対象外となる可能性があります。
- 日々雇用される従業員
- 次のような労働者は「子どもの看護休暇」を取得できないとする労使協定がある場合
「雇用期間が6ヶ月未満」「1週間の所定労働日数が2日以下」「半日・時間単位で子どもの看護休暇を取得することが困難と認められる業務に従事している(※)」
(※)1日単位での取得は可能
⑥介護休暇
「介護休暇」とは、要介護状態になった家族を介護するため、短期間取得できる休暇のことです。
要介護状態とは「身体上・精神上の障害や病気などによって、2週間以上の期間にわたって常時介護が必要な状態」と定義されています。
取得可能な期間は、対象の家族1人につき、5日以内。最大で10日となっています。
2021年1月から、時間単位での取得も可能となりました。
正社員だけでなく、期間に定めのある労働者も対象です。ただ以下に該当する場合は、対象外となる可能性があります。
- 日々雇用される従業員
- 次のような労働者は「介護休暇」を取得できないとする労使協定がある場合
「雇用期間が6ヶ月未満」「1週間の所定労働日数が2日以下」「半日・時間単位で介護休暇を取得することが困難と認められる業務に従事している(※)」
(※)1日単位での取得は可能
⑦介護休業
「介護休業」は「介護休暇」と同様に、要介護状態になった家族を介護するための休暇制度となります。
大きく違うのは、取得できる休暇期間です。対象となる家族1人につき最大3回まで、通算93日まで取得できます。
また当日申請が可能な「介護休暇」と異なり、「介護休業」は開始日の2週間前までに会社へ書面での申請が必要です。
以下に該当する方が利用対象者となります。
- 入社から1年以上
- 「介護休業」開始日から数えて93日経過した後、半年以上の雇用契約が続く
法定外(特別)休暇との違い
法定休暇と混同されやすいものとして、法定外(特別)休暇があります。
ここからは法定外(休暇)とはなにかについて押さえていきましょう。
法定外(特別)休暇とは?
法定外(特別)休暇とは、企業が福利厚生の一貫として、従業員に付与する休暇のことです。
企業が独自に設定できるため、「慶弔休暇」「夏季休暇・冬期休暇」といった一般的なものから、「リフレッシュ休暇」「バースデー休暇」など、企業それぞれで多種多様な休暇を定めています。
とくに昨今、”働き方改革” の流れも後押しし、ユニークな法定外(特別)休暇を新設する企業も多く見られるようになりました。
ここには既存社員の定着率向上、新たな人材の確保、企業イメージの向上などの狙いがあるといっていいでしょう。
また休暇中の給与支払いについて、法定外(特別)休暇では雇用主への法的な義務はありません。
そのため、会社ごと、休暇制度ごとに有給・無給の設定に違いがあります。
自身の会社が法定外(特別)休暇として、どんな制度を設けているのか、就業規則などをチェックしてみましょう。
法定休暇と法定外(特別)休暇の違い
ここまで説明したように、法定外(特別)休暇は企業独自で設ける休暇制度となり、法律での定めがありません。
そのため法定休暇との違いは、法律で定められた休暇制度かどうかになります。
つまり法定外(特別)休暇は、企業が自由に設置・廃止を決められるのに対し、法定休暇はそうしたことができません。
法定休暇はどんな会社で働く人にも等しく用意された、労働者の権利なのです。
一人では解決できない問題は労働組合に相談を
労働者が得られるべき権利について、実は知らなかったことも多いですよね。
会社から不当な扱いを受けないためにも、十分な知識を身につけておきましょう!
ただどんな人でも、働く上で困ったことや、一人では解決できないことに直面することもあるはず。
そうしたときは、一人で悩まず、ぜひ労働組合に相談してみてください。
とくに労働組合に加入していない方、加入する労働組合からのサポートが期待できないという方は、「ねこの手ユニオン」に相談してみましょう。
ねこの手ユニオンは組合費が無料。あらゆる労働問題に精通したプロフェッショナルが在籍し、無料で何回でも相談できます。
きっと悩めるあなたの心強い味方になってくれるはずですよ。