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文書提出命令とは?労働問題で必要となる証拠についても解説
実際に証明するものが手元にない場合、どうしていいか迷いますよね。
「もし会社に提示をお願いして断られたらどうしよう」
「そもそも残業未払いの請求をしたいので、証明となるものを出してくださいとは言いにくい」
不安な気持ちがたくさんあると思います。もし手元に証明するものがない場合でも、持っている人に提出を要求できますので安心してください。
証拠の提出を要求することを文書提出命令と言います。今回は文書提出命令とはいったい何?ということから、実際に裁判や交渉のときに証拠となるものについてご紹介します。
文書提出命令とは?
文書提出命令とは,相手方当事者または第三者が文書を所持する場合に,その所持者が文書の提出義務を負う場合に限り(民事訴訟法220条),裁判所がその所持者に対して当該文書の提出を命じることをいいます。
難しい言葉で表現されていますが、例えば残業代の未払いが続いて会社に請求したいときで考えてみましょう。
毎日残業しているけど、残業が証明できるものを自分で持っていない場合もあると思います。タイムカードやパソコンログなどの情報は会社で管理していますよね。
残業しているのに証明がないと困るのは自分です。
そんなときに残業している証拠の文書を出して!と会社に命令できるのが文書提出命令です。
つまり、自分が証拠となるものを持っていないけど、相手は持っている状況のときに証拠として提出を命令するものです。
法的な効果
裁判所を通して相手方、つまり会社に伝えるため、例外の理由に該当しない限り会社は拒めないのです。
万が一この文書命令に従わず提出しない場合や、裁判で使うことを妨害するためにデータの差し替えや紛失をした場合は、申立てした人が有利になります。
つまり、残業代が払われていません!という主張が真実と認められる可能性が高くなるのです。本人が計算した残業代がそのまま認められる可能性もあります。
また会社以外の第三者が証拠となるようなデータをもっていた場合、第三者も命令に従わないと20万以下のペナルティ―が課されることもあるようです。
提出が必要な文書
残業であればタイムカードや就業規則などは提出義務のある文書に該当します。
その他には出勤簿や勤務時間表、超過勤務証明書や業務日誌などです。身近なイメージだとこのような文書があげられます。
基本的にはプライバシーを侵害しないもの、公務秘密文書とよばれるもの以外は提出の義務があるのです。
提出義務のない文書
全ての文書に対して開示義務があるわけではないので覚えておきましょう。
例えば以下のような書類です。
- 刑事訴追を受けて有罪判決を受ける恐れのある事項の書類
- 公務員が関わる仕事上の秘密に関わる文書
- 技術や職業上秘密にかかる文書
- 自己利用文書
- 刑事事件記録
ざっくりプライバシーに関わる文書や公務秘密文書とよばれるもの以外は全て提出しなければならないんです。
この文書に該当するかどうかは裁判所がおこないます。判断する手続きのことをインカメラ手続きといい、非公開でおこなわれます。
タイムカードや就業規則は公務秘密文書ではないので、提出しなければならない文書です。
労働問題で有力となる証拠の事例
労働問題でいざ裁判となったときには、有力な証拠があると有利です。今回は残業代未払いのときの有力な証拠と、パワハラを受けたときの有力な証拠となるものをご紹介します。
残業代未払い・不当解雇の場合
労働契約の証拠
(労働契約書・雇用契約書・就業規則など)
就業時間や時間外労働に関する取り決めを立証するために必要な証拠です。
残業していた事実を証明する証拠
(タイムカード・手帳・POCログデータ・グループウェアの記録・警備記録・タコグラフなど)
特に電子的に退勤時間を表記したものは証拠としてチカラがあります。
そのほか仕事に関わる営業メールの送信時間や、タクシーの領収書(終電を逃しタクシーで帰宅した場合など)、LINEでのやり取り(誰かと残業内容のやり取りをしている内容)のスクショなども有効になる場合があります。
勤怠の証拠になりそうなものは、とにかく保管しておきましょう。
残業内容がわかるもの
上司から残業するように指示されたメールやメモ、書類などは、残業内容を立証する上で有力な証拠となりやすいものです。
例えば営業先や取引先への営業メールや、トラブル対応後に送る復旧連絡メールなど、業務に関連するメールは証拠として扱われます。
給与支給額の証拠
(給与明細、源泉徴収票)
実際にいくら支給されていたのかという証拠です。退職後でも、源泉徴収票であれば会社に問い合わせることでもらえることでしょう。
また、勤怠記録やメール、パソコン内に保存してある画像データなど、退職してからでは集めにくい証拠を集めておくことも重要です。必要な場合はスクリーンショットして、保存しておくことをおすすめします。
残業代請求は、2年までしかさかのぼって請求できないため、なるべく早く動きましょう。
パワハラを証明するもの
パワハラを受けたとき、できる限り有力な証拠は残しておきましょう。気持ちは沈んでいると思いますが、証拠となるために少しずつでも集めることをおすすめします。
ボイスレコーダーによる録音
またはスマホに搭載されているICレコーダーでもOKです。パワハラの内容を伝えるためにも、パワハラを受けそうなときは常に録音ONにできるように準備しておきましょう。
メールの文章
理不尽なメールの内容、特に暴言や誹謗中傷などの言葉は保存しておきましょう。あまり残したくはないかと思いますが、証拠として残しておくことが大切ですよ。
医師の診断
パワハラが原因で精神的な負担からメンタルの状態に問題が生じたら、医師に診断書を出してもらいましょう。精神的ストレスが原因とされるような病気、例えば胃潰瘍やうつ病などの病気が証明できると裁判で有利になる可能性があります。
部署異動の通達
理不尽な部署異動や転勤の辞令が出されたときの通達が証明になります。書面やメール、様式は問題ないので証拠として残しておきましょう。
日記や業務日報、メモ書き
日々のパワハラの詳細を記載した日記も証拠です。日付と内容が分かるようにしておくと良いでしょう。業務日報や単なるメモ書きも証拠となるので、捨てずに取っておきましょう。
SNS
加害者がSNS上に侮辱する言葉を発していたら、その証拠も残しておきましょう。消されてしまうと証拠にはならないので、見つけたらスクリーンショットして手元に残してくださいね。
文書提出命令の申立方法
基本的に書面で申し立てる必要があるので覚えておきましょう。そのため、まずは申立書の作成から準備していきます。手順は以下の通りです。
- 申立書の作成
- 裁判所に提出
- 裁判所による申し立ての許可
申請方法を順に見ていきましょう。
1.申立書の作成
民事訴訟法第221条に則り、下記の条件を満たした申立書を作成します。
提出を求める文書の表示
何を提出してほしいかを記入します。例えばタイムカードや労働契約書などです。
提出を求める文書の趣旨
これはどんなことが書かれているもので、何が証明できる文書なのかを書きます。
提出を求める文書の所持者、
誰が持っているのか明確にしましょう。
証明すべき事実
どんなことを証明したいかを書いていきます。例えば残業未払いが60時間程あります…のように。
文書提出義務の原因
何でこの文書を出すことになったのかの理由です。
2.裁判所に提出
裁判所に提出すると、文書提出命令の申立ては民事雑事件簿に搭載されます。そうすると雑事件番号というものがつき、裁判所に受理されます。
提出先は地方裁判所か簡易裁判所です。
裁判所による申立ての許可
裁判所が申立てを容認したら、相手方(または会社)に文書の提出命令が書面で送られます。
内容によっては申立てを却下される場合もあります。そのときは不服申し立てもできるので安心してくださいね。
労働問題の相談先
文書提出命令について説明しましたが、正直普段から法律に関わりがないと難しいですよね。
あれはOKで、これはNG…判断は難しいです。
そのようなときは専門の機関を頼りましょう。もし不当な扱いを受け、悩んでいる場合は合同労組(ユニオン)の利用がおすすめですよ。
会社を退職した後でも加入できるので、例えば退職後に残業代未払いが見つかった場合でも安心です。
この合同労組は各地域にあります。その中でもどこに相談するか悩む方は「ねこの手ユニオン」がおすすめです。
地域に関係なく不当に扱われる働く人の悩みや問題を、さまざまな角度から解決しています。相談の受付もメールやLINEから気軽に利用でき、入会金や組合費も無料です。
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