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管理職にも過重労働・労働時間の規制があります!
夫が先月から勤めてる飲食店の店長を任されてるんだけど、朝から深夜までずっと働いていて。でも管理職だからしょうがないんだって言ってるの。
近年、 “ブラック企業” という言葉とともに、「名ばかり管理職」の問題が社会問題となりました。
「名ばかり管理職」とは、その名の通り、”名前だけの管理職”のこと。
労働基準法上の管理職、いわゆる「管理監督者」に相当する十分な権限や報酬が与えられないにも関わらず、長時間残業を強いられたり、残業代が支給されなかったりと、不十分な待遇を受けている従業員のことを指します。
今回は、この”管理職”にまとう、過重労働・労働時間について詳しく見ていきましょう!
管理職に過重労働・労働時間の規制はある?
結論からお伝えすると、労働基準法における”管理職”、正式には「管理監督者」と呼ばれる方々には、一般的な労働者に定められている労働時間・休憩・休日などの規制が適用されません。
そのため「管理監督者」は、36協定の “1ヶ月最大45時間、年間320時間” という時間外労働の規制を受けず、実質的に労働時間・残業時間の制限がないのです。
加えて企業は、通常1日8時間を超えた際に発生する「残業代」や休日に勤務した際の「割増賃金」を支払う必要がなく、これが”名ばかり管理職”を生む原因となってきました。
ではなぜ、「管理監督者」は一般的な労働時間などの制限を受けないのでしょう。
それは「管理監督者」は経営者と同等、もしくはそれに近い権限があり、就業時間を自身の裁量で決定することができる。また給与や賞与などの面で、その地位や役割にふさわしい待遇を受けているはずであり、労働基準法の労働者保護の観点になじまないと見なされているためです。
ただ近年、こうした「管理監督者」の長時間労働について新たな動きが見られました。
それが、2019年4月に施行された「働き方改革関連法」です。
ここでは一般労働者の長時間労働に、以前にも増して厳しい制限がかかるのと同時に、従来は必要とされていなかった「管理監督者」に対する労働時間の把握が義務化されることになりました。
一般労働者の業務負担軽減を進める反動として、「管理監督者」に一層の過重労働がのしかかる懸念が背景にあると見られています。
そもそもどんな労働者であっても、過度な長時間労働は過労死の危険性をはらんでいるといっていいでしょう。
厚生労働省では「週40時間を超える時間外労働、休日労働がおおむね月45時間を超えて長くなる場合」に健康被害のリスクが徐々に高まるとしています。
こうした背景を踏まえ、「管理監督者」においても “月80時間を超える残業をした労働者”には医師による面接指導が実施されることとなりました。
労働時間の規制のない「管理監督者」といえども、労働時間を適切に把握・管理し、健康被害の予防や労働状況の適正化を図る義務が企業には付与されたといっていいでしょう。
管理職の定義とは?
ここまで触れてきた労働基準法における管理職(管理監督者)と、一般的に企業で用いられる管理職とは大きな違いがあります。
一般的に企業では「マネージャー」「課長」「部長」「店長」など、組織の全体や一部を管理する役職を “管理職” に位置づけているといっていいでしょう。
ただこれは法律で規定された名称ではありません。
労働基準法における「管理監督者」は厳格に定義があります。
それは単なる役職名ではなく、職務内容や責任・権限、待遇など、実態に基づいて判断されるのです。
では「管理監督者」とはどのような人のことを指すのか。その4つの定義について、詳しく見ていきましょう。
①経営者と一体的な立場で職務を行っている
経営者と一体的な立場として、 “労働時間、休憩、休日などに関する規制の枠を超えて活動せざるを得ない” 「重要な職務内容」を担っているか。
まずこれが一つの判断基準になります。
ここで重要なポイントとなるのが、「企業運営に関わる意思決定に関与できる立場にあるか」です。
たとえば経営会議に参加し、発言権を持っていたり、経営方針に基づき、部門の方針を決定する権利を持っていたりといった方が該当します。
そのため経営会議に定期的に参加する立場にない「係長」「課長」など、部門のなかのイチ組織の管理を任されているといった方は「管理監督者」にはなりません。
②重要な責任と権限を持っている
①で挙げた職務内容と同様に、 “労働時間、休憩、休日などに関する規制の枠を超えて活動せざるを得ない” 「重要な責任と権限」を有していることが必要となります。
従業員の採用、部下の人事評価、部下の賃金や労働条件、予算管理や費用管理など、こういった内容を自身の裁量で決定できるか。
つまり、 “人事権を持ち、部下の労務管理や企業の内部運営に関する責任と権限があるか” ということが重要となってきます。
たとえば “リーダー” “課長” “店長” などの役職であっても、経営者からの経営方針や指示を伝達することが中心だったり、多くのことで都度上司の決裁や承認を必要としたりする方は「管理監督者」に当てはまりません。
具体的に、採用面接は行うが決定は経営者が行っている、人事部が部下の人事評価や人事考課を担っている、事業所・店舗などで勤務割表の作成や所定時間労働の命令を行う実質的な責任と権限がないといった場合となります。
③労働時間などの規則になじまない勤務形態である
労働時間の制約を受けず、勤務時間について裁量制が認められているかもポイントとなります。
つまり、「管理監督者」は厳密に決まった時間で出退勤をしなければならないなどの決まりに縛られず、始業時間に遅れたからといって遅刻扱いになるといったことがありません。
具体的にいえば、「管理監督者」はときを選ばず経営上の判断や対応が要請され、労務管理において一般労働者とは異なる立場である必要があります。
そのため労働時間において厳格な管理をされているような場合は、「管理監督者」に当てはまりません。
たとえば、就業規則で定められた所定労働時間の枠組みで働くことが義務付けられている、業務量や労働時間について上司の指示を仰いでいるといった状況を指します。
④その地位にふさわしい待遇を得ている
「管理監督者」は月給や賞与、その他の待遇において、一般の従業員と比べ、相応の待遇を得ている必要があります。
これはイチ従業員でありながら、経営者と一体的な立場で重要な職務を担っている存在であるという考えからです。
つまり一般の従業員と比べて給与が数千円程度しか差がない、残業代がなくなった分、給与の総額が下がった、といったケースでは「管理監督者」として認められません。
管理職の過重労働・労働時間の規制について
これまでにも少し触れてきたように、「管理監督者」には通常定められた労働基準法の一部が適用されません。
具体的には以下のような事項が適用外となります。
労働時間(労働基準法第32条)
休憩時間を除き、1日8時間・1週40時間を超えて労働させてはならない。
休憩(労働基準法第34条)
少なくとも、1日6時間を超える場合は45分、8時間を超える場合は1時間の休憩を与えなければならない。
休日(労働基準法第35条)
毎週少なくとも、1回の休日を与えなければならない。
時間外労働・休日労働(労働基準法第37条)
法定労働時間を超えた労働や、休日における労働については、割増賃金を支払わなければならない。
続けて押さえておきたいのが、「管理監督者」にも適用される規定についてです。
たとえば、以下の内容は適用されます。
深夜労働(労働基準法第37条)
午後10時から午前5時までの労働については、割増賃金を支払わなければならない。
年次有給休暇(労働基準法第39条)
勤務年数に応じ、定められた有給休暇を与えなければならない
※2019年4月から、年5日以上の取得が義務化
会社から過重労働を強いられる場合の相談先は?
ここまで見てきたように、労働時間などの上限がない”管理職”として該当する方は非常に限定的です。
そのため、 “管理職” として長時間労働を強いられていたり、残業代が適用外となっていたりする方は、ぜひ上で挙げた「管理監督者」の定義と、自身の状況を照らし合わせてみましょう。
経営会議などの意思決定の場に定期的に参加されているでしょうか?
会社や上司が決めた時間ではなく、自身の裁量で就業時間を決めているでしょうか?
給与や賞与は一般従業員と比べて十分な金額だといえるでしょうか?
一例ですが、これらのなかで、一つでも当てはまらないものがあれば、「管理監督者」には該当しません。
そうなれば、労働時間・残業代などは一般の従業員と同様に、労働基準法の規定が適用されます。
さらに残業代が支払われていないとしたら、これまで未払いとなっている分を請求する権利もあるといっていいでしょう。
また「管理監督者」に該当する方でも、あまりにも過重な労働は「過労死」のリスクをはらみ、甚大な健康被害をもたらす可能性があります。
“管理職” だからといって、過重な労働を強要される状況を受け入れる必要はありません。
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