業務委託契約の給料未払いは労働基準監督署に相談できる?

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ねこの手ユニオンに給料の未払いでご相談をいただく方の中にも、実際に業務に関する契約書を確認してみると「雇用契約」ではなく「業務委託契約」だったという方が少なくありません。

この場合、企業に「雇用」されている形ではなく、「業務委託」で個人事業主などとして企業の業務を委託されて業務を行っているということになります。
そのため、業務委託契約の場合は正確には「給料」という言い方はせず、一般的に「報酬」を使います。

では、業務委託契約の場合に企業からの報酬が支払われなかった場合、労働基準監督署に相談することで何かしらの対応をしてもらうことはできるのでしょうか。

本記事では業務委託契約の場合は労働基準監督署に相談できるのか、報酬の未払いがあった場合はどのように対応をしたら良いかについて解説していきます。

目次

業務委託契約とは

業務委託契約とは、企業や個人が特定の業務を外部の個人や法人に委託する契約のことです。
委託された側は一定の業務を独立して行い、その対価として企業からの報酬を受け取ります。

業務委託契約というのは「委任契約」や「請負契約」を大きく括った言い方です。

この契約形態では、業務を委託する側(委託者)と業務を受託する側(受託者)の間で契約内容が定められ、委託される業務の範囲や品質、報酬の支払い条件、納期などが明確に定められます。

要するに雇用契約とは異なり「使用者」と「労働者」というような主従関係では無く、独立した事業者同士の関係であるということになります。

そのため、業務委託契約の場合は「一事業者」として扱われ、「労働者」としての扱いにはならないのです。

委任契約とは

「委任」とは当事者の一方が法律行為をすることを相手方に委託し、相手方がこれを承諾する内容の契約をいいます(民法第643条)。
また、法律行為ではない事務を委託する内容の契約は「準委任」と呼ばれ、委任に関する民法の規定が準用されます(民法第656条)。

委任・準委任に関する契約は、「業務委託」の名称で締結されることが多いようです。
「雇用契約」とは異なり、委任者と受任者の間に指揮命令関係が無い反面、各種労働法の規定は適用されませんし、会社側が社会保険料を負担する必要もありません。

また、委任は請負とは異なり、委任業務の遂行自体が目的となるため、業務の出来や結果にかかわらず報酬が支払われます。

請負契約とは

「請負」とは当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対して報酬を支払う内容の契約です(民法第632条)。
建物の完成工事・内職・ライターなど、成果物の納品をすることで報酬を得る業務は、一般的に「請負」に該当します。

請負は、委任と同様に「業務委託」の名称で締結されることが多く、注文者と請負人の間に指揮命令関係はありません。
これも委任と同様で各種労働法の規定の適用や会社側が社会保険料の負担をする必要はありません。

請負が委任と異なる点は、仕事の完成を契約の目的としている点です。
請負は仕事を完成させる義務がありますので、完成物に不具合があった場合は「瑕疵担保責任」を負います。

つまり請負人は、仕事を完成しなければ、請負契約に基づく報酬を受け取ることができないのです。

業務委託報酬未払いは労働基準監督署に相談できる?

前項まででお分かりいただけるように、業務委託(委任・請負)契約は企業に雇用されている「労働者」ではなく、企業から業務を受注した「一事業者」としての扱いとなります。

そして、労働基準監督署(以下労基署と呼ぶ)は労働者の権利保護や労働環境の改善など、労働基準法に関する問題を管轄する政府機関です。

そのため、「労働者」としての扱いではない業務委託契約の場合は基本的に労基署の管轄外ということになります。

よって、業務委託報酬の未払いを労基署に相談したとしても、労基署が動くことができないケースが大半です。

ただし、業務委託契約の場合であっても、その実態が「当事者間の指揮命令関係」が認められる場合など、実質的な雇用関係にあったという「労働者性」を証明できれば、労基署が動いてくれる場合があります。

しかし、この場合も労基署ができるのは是正勧告までであり、実際に相談者の代理人として未払い報酬の請求をしたり、企業に支払い命令をすることは出来ませんので覚えておきましょう。

業務委託報酬が未払いの場合に取れる手段は?

業務委託報酬が未払いの場合に取れる手段としては以下の方法があります。

  • 直接交渉
    委託契約を締結した相手(企業など)と、報酬の支払いが遅れたり未払いとなっている原因を確認し解決に向けて直接交渉して支払いを要求します。
  • 書面による催告
    委託契約を締結した相手(企業など)に対し、書面にて催告を行います。
    支払い期限などを設定して迅速な支払いを要求します。
  • 法的手段
    交渉や催告を行っているにも関わらず、報酬が支払われない場合には法的手段の検討も必要になります。
    民事訴訟を提起し、裁判所を通じて報酬の支払いを要求します。

まずは直接交渉や書面による催告を行いましょう。

それでも支払いがなされない場合には、法的手段をとる事になりますが、民事訴訟を起こすとなるとそれなりの時間や費用がかかり、精神的な負担も大きいため、結局泣き寝入りしてしまう方も少なくありません。

しかし、前述したように契約上は「業務委託契約」となっていても、実態として「当事者間の指揮命令関係」が認められる場合など、実質的な雇用関係にあったという「労働者性」を証明できれば、労基署に動いてもらえる場合や、労働組合を通じて未払い賃金請求や団体交渉を行える可能性があります。

また、雇用関係にあったことを認めさせることができれば、通常の労働時間を超えて行っていた業務に対する残業代も合わせて請求できる場合もあります。

雇用関係・労働者性が認められるケースは?

雇用する企業側にとっては従業員として雇用をすることにより、各種労働法に基づいて残業代の支払い義務や不当解雇規制、社会保険料の負担など、大きなコストがかかります。

そのため、企業側も実際には「雇用」と同様の業務内容だったとしても「業務委託契約」の体裁をとって低コストで労働力を確保しようとすることは実際のところ少なくないのです。

しかし、「業務委託(委任・請負)」の名目で契約が締結されていたとしても、各種労働法によって労働者として保護されるかどうかは、契約書の規定のみで判断されるわけではありません。
実際の業務の実態を実質的に見て判断します。

よって、前述したように契約書の名目は「業務委託契約」であっても、実態として雇用関係にあったことが認められれば、書く主労働法による保護が適用される場合があるのです。

指揮命令関係があるかどうかが重要

「雇用」と「業務委託」の明確な違いは「当事者間の指揮命令関係の有無」です。

業務のやり方や業務を行う時間などを業務を行う側の裁量で決められる場合は「業務委託」が成立します。
これらに対して使用者からの拘束性や業務を行うものにとっての制約などが多く課されている場合には労働者性が認められて、「雇用関係にあった」と判断される可能性があります。

具体的には下記のようなケースが挙げられます。

  • 委託者が受託者に対して業務のやり方について具体的な指示命令を行っている。
  • 受託者が業務を行う時間や場所が委託者によって決められている。
  • 受託者に就業規則に準ずるような社内ルールを遵守することが義務付けられている。
  • 受託者に業務を断る自由が認められていない。
  • 兼業が禁止されている。
  • 業務日数や報酬が固定されている。
    など

これらに該当する場合は「雇用関係にあった」ということが認められ、労働基準法が適用される可能性があります。

雇用関係・労働者性が認めさせるための証拠となるもの

業務委託契約で雇用関係・労働者性を認めさせるためには、それ相応の証拠が必要になります。

証拠となり得るものの一例をご紹介します。

  • 給与明細
  • シフト表
  • 業務指示メールの履歴やLINEやSMSなどのスクショ
  • タイムカード
    など

業務委託契約でタイムカードで出勤管理されている場合や、報酬の支払いにあたって給与明細の名目で発行されることは稀ですが、これらがあるのであれば、それはもう雇用関係にあると言ってしまってもおかしくありません。

また、メールやLINEなどで業務についての指示命令を受けている履歴やスクショなどがあればそれも証拠になります。

労働者性を認めさせて、未払い報酬の請求や残業代の請求を行いたいという場合には、あらかじめ証拠を集めておくようにしてください。

労働基準監督署以外の相談先は?

業務委託契約で報酬の未払いがある場合の相談先は労基署以外で言うと主に以下の2つが挙げられます。

  • 弁護士に相談する
  • 労働組合に相談する

それぞれについて解説します。

弁護士に相談する

労働者性を認めさせられるかどうか自信がない場合や、そもそも労働者性が無かった場合には弁護士に相談することをおすすめします。

労働者性を認めさせて未払い賃金請求を行うのか、労働者性を認めさせるのがむずかしければどのように訴訟を行っていくかなど相談にも乗ってくれるでしょう。

ただし、相談料が発生する場合もあれば、それ相応の報酬も発生しますので、自分で請求したり、労働組合や労基署に相談して解決できる場合と比べると、費用の負担が大きくなる可能性があります。

なるべく費用を抑えたいという場合は出来ることを行った上での最後の砦として弁護士への相談を検討されると良いでしょう。

労働組合(ユニオン)に相談する

ある程度の証拠などが用意できていて、労働者性を認めさせられる可能性があれば、労働組合に相談してみるのも手です。

労働組合で労働者性を認めさせることができれば、未払いの報酬や残業代の請求を弁護士よりも安価な手数料で請求できる可能性があります。

ただし、労働組合も様々で、加入金や活動費などを取られる場合もありますので相談する組合の選定は必要です。

相談する労働組合に迷われたらねこの手ユニオンにご相談ください。
ねこの手ユニオンでは加入金や相談料、着手金などは一切いただいておりません。
無事に解決した場合のみ、解決金額の3割だけ組合活動維持のための義援金として納めていただいております。

LINEから無料相談が可能ですので、ある程度の証拠などのご用意ができていて相談先にお悩みの方は以下のボタンからご相談ください。

まとめ

業務委託契約の報酬の未払いは基本的に労働基準監督署に相談しても管轄外となることが多く、相談はできたとしても、実際に動いてもらうことは難しいでしょう。

労働者性・雇用関係にあったことを認めさせる証拠がある程度用意できていれば労働基準監督署が動いてくれる可能性はありますが、労働基準監督署にできるのは是正勧告までで、支払い命令や未払い賃金請求をすることは出来ません。

業務委託契約で報酬の未払いがあった場合には、労働者性が無かったのであれば弁護士に、労働者性があり、証拠も用意できているようであれば弁護士か労働組合に相談されるのが良いでしょう。

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この記事を書いた人

過去の会社で弁護士を通じて未払いの残業代を請求し2年分の残業代の奪還に成功しました!この過程で、自身と同じような悩みを抱える人がまだまだ多く存在することに気づき、みんなの悩みや疑問を解決するために役立つ情報を発信します!

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